山﨑賢CTOが語る、イオンのDXの現在地とグループ連携の戦略
お客さまに還元できる
データ活用を進める
――イオンスマートテクノロジーが現在、最も注力している領域は何ですか。
山﨑 データの活用です。顧客IDの統合が7割ほど進んだため、データの活用価値が上がってきました。顧客IDがつながると、グループ企業を横断したさまざまな消費行動を可視化できるようになるためです。こうしたなか、顧客データの分析によって新規ビジネスにつなげるというよりは、お客さまに還元できる活用方法を優先的に取り組んでいきます。たとえば、One to Oneマーケティングによって、個々のニーズに即したクーポンの配信や、お客さまにとってより心地の良いターゲティング広告を行うといったものです。
――購買データの分析結果は各事業会社に共有されているのですか。
山﨑 個別の事案によって状況が異なります。事業会社のデータをフラットに共有するかという点については検討段階です。イオンの事業会社もさまざまで、イオンリテールのように相当量のデータを持ち、自社で複雑な分析まで可能な企業がある一方、非常に規模の小さい企業もあります。グループ全体で共有できたほうがよいのですが、win-winの関係構築も必要であり、個別の事業会社ごとに調整が必要だと考えています。
中国の事業会社の
優秀なエンジニアを活用
――こうしたプロジェクトを進めるイオンスマートテクノロジーでは現在、どれくらいのエンジニアが在籍していますか。
山﨑 全体で300人強ほどです。グループ会社からの移籍ではなく、ほぼ外部から採用しています。また業務委託の人材もいます。エンジニアの数自体は足りていますが、正社員の数が足りないので増やしていく方針です。
それ以外に、イオンは19年4月、グループ企業に対するデジタルビジネスソリューションの提供を目的とした機能会社Aeon Digital Management Center(DCM)を中国で立ち上げています。同社の半分ほどのエンジニアも日本の業務を担っています。中国には優秀なエンジニアが多く大きな戦力となっています。
――イオンの各事業会社に在籍しているエンジニアとはどのような連携を図っているのでしょうか。
山﨑 事業会社のシステム部門の担当者とは、現段階では全体に情報交換するような体制をとっていません。IDやデータの統合などのプロジェクトをきっかけに、ゆるやかにつながっていくフェーズとしています。
イオンと事業会社の関係性は、トップダウン方式ではなく独自性を重んじる方針で、だからこそ生まれる各社の自主性はイオンの強みだと感じています。ですので、イオンスマートテクノロジーが一気にガバナンスを発揮するのではなく“連邦制”のようなイメージで、1社ごとに協力できることはないか問いかけて連携のきっかけをつくっていきたいと考えています。(後編に続く)