行列の時間を買うテーブルチェック ファストパスは飲食業界を変えるか
導入の広がりがインバウンド消費の拡大につながる
テーブルチェック ファストパスの導入店舗は2024年中に300店舗に拡大し、ラーメンに限らず、とんかつ、カレー、うどん、スイーツなどの行列店に並ばずに入れるようにしていくという。課題があるとすれば、飲食代とは別に手数料を取ることに抵抗があり、時に飲食店側からネガティブな反応が見られること。谷口社長は「店舗それぞれの考え方で否定はしないが、提供する料理の値段以上に儲けてはいけないという思い込みが強いのではないか」と話す。
だが、考えてみれば、優先案内サービスの利用は、行列に並ぶ時間を金銭と等価交換して買うことにほかならない。テーブルチェックの調べによると、テーブルチェック ファストパスのサービス開始後、20%の否定的な意見があったものの、ポジティブに受け入れる好意的な声が倍以上の54%あったという。
タイムパフォーマンスを上げるために手数料を惜しまず支払う人がいることは、すでに3万人(2024年5月20日時点)がテーブルチェック ファストパスを利用していることが証明している。特にインバウンド客なら店に入るのを待つ1時間、2時間がなくなれば、訪問先を1つか2つ増やすことができる。それに伴うインバウンド消費の拡大も見込まれ、大きな視点で捉えれば、日本経済への貢献にもつながる。
「ホテルや航空チケットのダイナミックプライシングと同じように細かく変動する必要はなくても、飲食業界でも、もう少し需要と供給のバランスに応じた料金設定をして良いと思う。例えば月曜日は来店客が少ないものの、金曜日は予約しないと入れないといったように、混み具合にムラがある店も多い。月曜日は通常より安い価格でサービスし、金曜日は予約制で手数料がかかるとしても、何らおかしいことはない。今後はそういった流れになっていくのではないか」(谷口社長)
テーブルチェック ファストパスの広がりは、その流れに棹さすことになりそうだ。サービスの認知度を高めるための施策も準備しており、今後はブランディングに力を入れていくという。
「弊社はこれまで、コンシューマーマーケティングはまったく手がけていなかった。しかし、これからはコンシューマーの認知度を高めていく。1月にはマーケティングのチームを立ち上げた。また現在、Webサイトを改修中で、リニューアル後は優先予約受付をはじめ、弊社のサービスを利用している店舗を横断的に検索できるようにする。夏以降は、さまざまなところでテーブルチェックの名前を見たり聞いたりするようになるだろう」(谷口社長)
行きたかった店の、食べたかった料理を、待たずに味わえる。好奇心と食欲を確実に満たせる新しい選択肢を示すテーブルチェック ファストパスのサービスは、飲食業界のビジネスモデルを変えるか。これからの展開が注目される。