トライアルHD、東証グロース市場に上場 経営トップが語った今後の展望とは?
外部企業との”共創”進む
こうした小売事業とともに、業界内外で注目されているのが「リテールDX」に関連する事業だ。トライアルHDはグループ会社のRetail AI(東京都)が主軸となり、買物体験のさらなる向上を図る取り組みを長年推進してきた。
たとえば、お客が商品を自らスキャンし専用レーンを通過するだけで決済が完了するショッピングカート「Skip Cart®」、売場天井部に備え付けたカメラでお客や商品の動きを把握しAIを用いて分析する「リテールAIカメラ」、メーカーと協働で効果的な商品提案を行う「デジタルサイネージ」、そしてそれらのデバイスをフル導入し新たなリアル店舗のかたちを描いた「スマートストア」の出店などを進めている。
さらに21年には、福岡県宮若市において産官学連携型プロジェクト「リモートワークタウン ムスブ宮若」を開始。同市内の廃校や閉館した商業施設をそのまま活用し、AI、IoT関連の研究開発施設、その実証実験の場としてのリアル店舗を市内で展開している。
ここではトライアルの関係者のみならず、取引先のメーカーや卸企業の社員なども定期的に滞在し、トライアルとともにAIを活用した最適なプロモーションや棚割りなどについて日夜議論を行っている。
また直近では、日本電気(NEC)と顔認証決済技術で協業したり、日本電信電話(NTT)とサプライチェーンマネジメントの最適化に向けた連携協定を締結したりと、外部企業との“共創”の幅が一段と拡大している。
「トライアル」をより加速し、リテールDXの実現めざす
トライアルHDは今回の上場によって、生鮮強化を軸とした小売事業と、リテールDXの取り組みの双方をさらに加速させていきたい考えだ。小売事業については主力のスーパーセンターのほか、昨今強化している小型フォーマットの新規出店、そのほか物流インフラなどへの投資を進めていく。
同社の亀田晃一社長は「投資家の皆さまの理解を得ながら、さまざまなチャレンジをしていきたい。(これまでの取り組みが)少しづつ形になってきているので、さらに飛躍していきたい」と意気込みを語る。
またRetail AIの永田洋幸社長は「(株式上場は)大きな節目であり、新たなスタートラインに立った感覚もある。『トライアル』という社名のとおり、試行錯誤を繰り返しながら成長していきたい」と力を込めた。