コロナ収束でも好調維持の生協宅配 ユーザー獲得に向けた新施策「TRY CO・OP」とは
若年層に向けて
500円~の商品セットを販売
このように、コロナが収束しても高い利用水準を維持している生協宅配。しかし、競合他社も食品配送事業に積極投資をしており、今後、競争環境はいっそう厳しくなると想定される。
そうしたなか生協宅配はいかに成長を図っていくのか。藤井氏は「既存のユーザー層に利用を継続してもらいながらも、新しい利用者を増やしていくという両面からの対策を進めていく」と説明する。
このうち新しい利用者の獲得においては、23年度は若年層の新規入会に力を入れていく方針という。その1つのアプローチとするのが、非組合員向けに商品購入を通じて生協宅配を試してもらう「TRY CO・OP」だ。
これまで生協宅配には、子育て家庭が利用するイメージが強かった。この現状に対し、とくに現在生協に加入していない若年層のシングル世帯やDINKs(Double Income No Kidsの略称、子を持たない共働き夫婦)層にもアプローチすることをねらいとして、人気の冷凍商品を「朝食」「カフェランチ」「本格中華」といったテーマ別セットにし、500円~の手頃な価格で販売する。
そのために用いるのがツイッター、インスタグラム、TikTokなどのソーシャルメディアだ。各メディアのインフルエンサー達に商品を利用してもらい、口コミで商品の魅力を広めていく。
22年度までは東北・関東甲信越・東海エリアの一部で実験的に行っていた施策だが、23年9月以降、近畿・中国にも実施エリアを拡大する予定という。
高くなる組合員獲得のハードル
新施策は打開策となるか
これまで、生協の新規組合員の勧誘活動は、直接訪問を中心に行ってきた。しかし昨今では、とくに若年層を中心に対面での勧誘が敬遠される傾向が強くなり、ハードルが以前と比べて高くなっている。
「今までは生協本部職員が直接訪問を行い、そこから会話を始めて、新規入会の糸口を掴むことができた。ただ、本施策ではそれをあえて行わない。そのため文字どおりのお試し、つまり『美味しかった』で終わってしまい、入会につながらない可能性もある。組合員獲得という観点から見てどの程度の成果を上げられるか、模索している最中だ」と藤井氏は話す。
アマゾンやネットスーパーの存在感が高まる中で、生協は若者の支持を集めうる存在になれるか。組合員層の獲得に向けて生協が仕掛ける新たな施策に注目したい。