大戸屋HD コロワイドが筆頭株主となったことで客離れから脱却なるか 

兵藤 雄之
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客離れの原因の1つに高価格帯メニューの存在!?

 実は、2016年の5月、後継者を巡る争いが激しさを増し始めたころ、当時の役員に、2016年3月期決算について話を聞く機会があった。

 同氏はその際に「既存店客数は定食屋としての実力の目安」と話したうえで、増収増益にはなったが「既存店客数が対前期比3.5%減」となったことを問題視しており、その原因に「原価率の維持、コストアップの吸収、粗利益額の確保」を図るために実施した高価格帯メニュー(大戸屋のボリュームプライスゾーンより高めの1,200円~1,500円で提供)があるとし、「喫緊の課題として対応する」と言明していた。

 しかしながら、具体的な対応策として出されたのは、「850円メニューの露出」であり、それまでの大戸屋の売り物だった、“手づくりの温かさ”が感じられる店内調理による「600円台の定食メニュー」の復活ではなかった。

 それ以降、同社ではたびたび、メニューの変更、女性客を意識した取り組みなどを実施してきているが、結果からすれば、少なくとも、既存店の来店客数アップに効果は現れていない。むしろ、客離れを加速させているように見える。経営側の思いは、お客の心に届いていないのだ。

低収益のコロワイドが、果たして救世主になるか?

 今回大戸屋HDの筆頭株主となったコロワイドは、客離れにあえぐ「大戸屋」の救世主となることができるのだろうか。同社は、大都市圏の飲食店舗数が未だオーバーストア状態にあり、市場規模も漸減傾向にある国内外食市場において、M&Aにより大きな成長を遂げてきた。しかしながら、外食産業の上位3社(ゼンショーHD、すかいらーく、日本マクドナルドHD)と比べ、収益率で大きく劣る。直近決算の数値によれば、営業利益率は、ゼンショーHD3.1%」、すかいらーく「6.2%」、日本マクドナルドHD9.2%」に対し、コロワイドのそれは「1.7%」に過ぎない。

「コロワイドグループの保有する事業プラットフォームをさらに強化し、当社グループに参画するメリットを訴求する」という同社がめざすM&A戦略は、そうした経営状況で功を奏するのだろうか。

 大戸屋HD2020年3月期業績予想は、売上高275億円(前期比6.9%増)、営業利益48000万円(同15.9%増)を見込んでいる。

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