ユニフルーティジャパン代表取締役社長 ケナード・ウォング
「ボリュームよりバリュー」ハートフルの精神でおいしさを届ける
──そうしたなか、「ユニフルーティー」ブランドを認知させていくために、どんなことを手がけられましたか。
ウォング まず、お客さまに何を訴求したいのかを考えました。当社の存在意義を語るミッションステートメントはありますが、これはあくまでも社内向けのもの。対外的に伝えていくためには、もっと言葉を凝縮させてわかりやすく表現する必要があります。そこで、ブランドコンサルタントと協業しながら、コーポレートメッセージやブランドのポートフォリオを見直しました。経営陣だけでなく、本社・支社問わずに営業部や経理部、加工や受注の担当者、フィールドプランナー※5なども含め、すべての部署から参加してもらいワークショップを実施したのです。社員の約半数が集まりました。
ユニフルーティーという会社や、バナナを商材として扱っていることについて、それぞれの想いを見える化して整理し、その中からキーワードを引き出し、お客さまに響くようなメッセージ案を作成。それらを実際に消費者を対象としたグループインタビューで披露し、反応を確認しました。さらに検討を重ねて、より消費者目線のブランドメッセージをつくり上げました。それが「ハートフル× ユニフルーティ = ハートフルーティー『おいしい』を、『うれしい』に。」です。これによって、当社の企業理念や企業風土、そしてお客さまに伝えたいことが、ひとつの流れとしてつながりました。
私はハワイ出身ですが、ハワイ語に「オハナ」という言葉があります。「家族」に似た意味ですが、血縁関係のない間柄も含んでおり、深い絆を通してつながっている人たちの関係を指します。当社では、このオハナの精神をベースに、あらゆるステークホルダーに対して、家族のように強い絆で結ばれたビジネスを展開していきたいと考えています。家族というのは絶対に裏切ったりしません。同じように、生産から販売まで、家族から家族へ届けるように、信頼を裏切らない姿勢で「ユニフルーティー」ブランドを展開していきたいと思っています。
想いやストーリーを伝え、ブランドの価値を訴求
──具体的にどのようにして商品を訴求していきますか。
ウォング 一般に、消費者はモノのよさだけを基準に購入するのではなく、そこに込められたメッセージや背後にあるストーリーを大切にしています。「いい畑で、いいバナナをつくっているから買ってください」だけではお客さまには響きません。品質が高いのはもちろんのこと、ブランドの想いを情緒的にストーリーをもって伝えていく。そういう商品展開を考えています。
店頭では「高地栽培」など、栽培地の標高を軸に差別化し訴求している商品が多く見受けられますが、そもそも業界として標高差のオフィシャルな定義はありません。ですから、そこにフォーカスせず、限定農園やレインフォレスト・アライアンス認証※6など、目線を変えた打ち出し方をしていきます。たとえば「こだわリッチ」は中高地栽培ですが、人と環境に配慮した限定農園で栽培しており、その土地がもたらす豊かな甘みともっちりとした食感が特長です。限定農園だからこそ安定した味と食感をお届けできる。そんなストーリーでお客さまに訴求していこうと考えています。
われわれの家族がプライドをもってつくっている商品ですから、その価値をどうお客さまに伝えていくか。違いをわかっていただけるように訴求していかなくてはなりません。価格に対しても然り。「ちょっと高くても、また買いたくなるバナナ」。そんな考え方で値付けを行っていくつもりです。
──いよいよ3月にユニフルーティーの新たなブランドメッセージとともに「ごほうびバナナ」「こだわリッチ」「やさしさバナナ」が発売されます。小売業の方へメッセージをお願いします。
ウォング 販売チャンネルが多様化する時代であっても、私は店頭の重要性を認識しております。小売業各社にとって年間を通して売上構成比の高いバナナだからこそ、「おいしいを、うれしいに。」をキーワードに、価値のある商品の提供と、店頭を重視した販売促進の実施に努めてまいります。ビジネスパートナーとして是非一緒に売上拡大に向けて取り組んでいきましょう。
※5:全国の取引先店舗を巡回し、売場のメンテナンスなどを行うスタッフのこと
※6:持続可能な地球資源利用を推進するために活動している国際的非営利環境保護団体が、厳格な基準を満たしたものにだけ与える認証のこと