ユニフルーティジャパン代表取締役社長 ケナード・ウォング
「ボリュームよりバリュー」ハートフルの精神でおいしさを届ける
1962年以来、半世紀以上にわたってバナナの輸入販売を手がけてきたユニフルーティー ジャパン(東京都)。自社ブランドを強化するべく、2018年、社員一丸となってコーポレートメッセージから見直し、リブランディングを図った。新たな一歩を踏み出した同社の事業戦略について、ケナード・ウォング社長に聞いた。
国内のバナナ消費は増加、一方で危機的問題も
──まずは、果実マーケットの現状とバナナ市場の動向について教えてください。
ウォング 総務省統計局の家計調査によれば、この30年間で家庭内における果物の年間消費量は落ちているものの、バナナの消費量は増えています。一世帯※1当たりの年間消費量は18.48kg※2。一人当たりに換算すると7.78kg※3になります。国内で流通する果物のなかでは、バナナが年間消費量トップの座にあります。
──バナナの消費量が伸びている要因は何でしょうか。
ウォング バナナに含まれる食物繊維やカリウムなどの栄養素の効果が広く知れ渡るようになったことで、美容や健康のために喫食する人が増えたことが挙げられます。また、手軽で腹持ちがよいことから、パンやごはんの代わりに朝食として食べたり、アスリートが運動前のエネルギーチャージとして取り入れたりなど、喫食シーンが広がったことも要因といえるでしょう。
その結果、季節による消費量の変動はあまり見られなくなっています。かつては、春と秋に伸びて、夏と冬に落ちる傾向にありました。すいかやりんご、みかんといった国産果実が旬を迎えると、消費者は、その季節の果実を好んで食べるからです。しかし、近年ではバナナの喫食理由が多様化したことで、消費量は年間を通してフラットになりつつあります。
──今後のバナナ市場についてどのようにみていますか。
ウォング 現在、日本で流通するバナナの約8割※4はフィリピンからの輸入によるものですが、中国をはじめとする他国との間でバナナ争奪戦がはじまっています。実際、2018年のフィリピン産バナナの輸出量は、初めて中国向けが日本向けを上回りました。中国国内でのバナナ消費が伸びていることや、中国産バナナの生産量が、異常気象やバナナが立ち枯れてしまう病気が原因で、大幅に減少したことが背景にあります。日本国内のバナナに対するニーズは多様化しています。女性の社会進出が進む今、手軽に食べられる食材としてもバナナは注目を浴びているのではないでしょうか。
全社一丸となってリブランディングを実施
──バナナを取り巻く環境が大きく変化していますが、御社ではどのような企業戦略をとっていますか?
ウォング 一言でいえば、「ボリュームよりバリュー」です。売上やマーケットシェアといった数字ではなく、消費者目線に立った価値を追求し、いい商品をつくっていく。基本となるのは、お客さまが何を求めているのかを分析し、それを基にお客さまが買いたくなるものをつくること。われわれがつくりたいものをつくり、それをお客さまに買ってもらうのではなく、“お客さまが欲しがっているものをわれわれがつくる”という考え方です。その実現により、商品価値・信頼性・企業責任の観点から、日本におけるバナナサプライヤーとしてナンバーワンをめざす。これが、当社のミッションステートメントです。
──昨年より御社が取り扱うブランドが変わりました。そのねらいは?
ウォング これまで半世紀以上にわたって、当社では世界最大手「チキータ」ブランドのバナナを日本で販売してきましたが、それ以上の商品価値の追求と、昨今の市場変化を鑑み、展開する商品を「ユニフルーティー」ブランドに統一することを決断しました。商品をコモディティ化させず、お客さまが必要とするものにフォーカスした商品づくりをする体制が整ったためです。
この20年間でバナナ業界は急速に変化しました。バナナはかつて、房売りなどのシンプルな販売形態でしたが、現在では産地でカットし袋詰めされ、パッケージやサイズ・量目といった店頭での差別化が進んでいます。より甘みの強いバナナをつくるために、寒暖差のある高地栽培が進んでいるのもそのひとつ。それ以外においても、原産国や品種、栽培環境、追熟方法などで違いを打ち出しています。
※1:2人以上の世帯
※2:数値は、総務省統計局 家計調査2017年より
※3:数値は、財務省貿易統計 統計国名符号表の2017年輸入合計(kg)を、総務省統計局発表の2017年10月時点での総人口で割ったもの
※4:数値は、財務省貿易統計 統計国名符号表2017年より