大吉買収で1000店舗超え!焼き鳥系居酒屋チェーン、鳥貴族はなぜ店舗数にこだわるのか

2022/10/28 05:55
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    店舗数拡大による仕入力増強でコスト課題を解消

     1000店舗は、創業時から大倉社長が目指していた数字であり、まさに悲願達成となる。

     大倉社長が店舗数にこだわるのは、シンプルにスケールメリットを享受するためだと考えられる。手頃なワンプライスで安心して飲食できることが同社の最大の売り。どうしても低くなる利益率をカバーするには、メーカーに主導されない仕入れ力が肝になる。

     大吉とは風土や文化こそ異なるものの、リーズナブルな値段設定で焼き鳥を主軸にする業態であり、共通項も多い。折しも、原材料、人件費、光熱費が上昇し続けており、諸経費の削減は共通の課題だ。自社努力だけでは限界もあり、頭打ちとなっていた1000店舗達成への起爆剤として、大吉買収は最善といえる選択だったと言えるだろう。

    目指す出店戦略とも合致
    共存共栄も可能

     ブランド力を活かし、繁華街や駅前の中〜大規模商圏に展開する鳥貴族に対し、「生業(なりわい)商売」を掲げ、住宅地や郊外の小〜中規模商圏で地域密着型で展開する大吉。戦略の違いで、結果的にすみ分けられた出店エリアも、同社が見据える全国展開、そして昨今注力する小〜中規模商圏への出店計画と合致する。

     大倉社長は、大吉の子会社化について「出店立地・主要顧客層が異なるため『鳥貴族』との共存共栄は可能。 本件により小~中商圏における全国的な店舗網を確保できるほか、焼鳥飲食店の運営に係るあらゆる共通点、同社のフランチャイズノウハウ、両社の独立制度等を活かすことにより、双方の事業拡大を狙う」と互いにメリットがあることを強調する。

    新規出店、海外進出計画も再開へ

     大吉の完全子会社化で成長曲線を一気にコロナ前に戻し、「再成長」を見据える同社。既存店売上の回復へは、新商品の開発やキャンペーンを積極展開。新規出店も初となる福岡を含む22店舗を予定するなど、巻き返しに抜かりはない。

     保留となっていた海外展開も再開する。候補地は米ロサンゼルスで、海外進出支援企業と契約し、準備を進める。水面下で進めてきた、社員の独立支援を目的にした小型の「鳥貴族パートナーズ店舗」の本格運用も開始。小商圏への出店に適した新業態で、未進出エリアの開拓も推進する。

     大阪で生まれた同社が、関東進出を契機に一気に店舗を拡大し、不動の地位を確保できたのは、低価格のワンプライスという独自性に加え、品質に妥協せず、安く・うまく・安心の三拍子が揃っていたからに他ならない。

     競合に打ち勝つことよりも、顧客を裏切らないためにーー。常にスケールメリットを意識しながら、1000店舗を節目の目標に掲げてきた大倉社長の決断は、コロナ禍で被った打撃を一気に払拭する会心の一撃となり、さらには居酒屋業界の再編と生き残りのひとつの道筋を示すことにもつながりそうだ。

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