小売DXの伝道師、LINE比企氏が語る アプリ開発・活用の最前線【前編】

2022/08/12 05:30
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    コロナ禍で小売業界では、販促事業のみならず顧客とのコミュニケーションのあり方が大きく変化している。そうしたなか、LINE(東京都)が、自社のAPI(※)提供による、小売業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)支援を加速させている。今や生活に欠かせないコミュニケーションツールとなった「LINE」を活用すると、小売業にはどのような可能性が広がるのか。同社のTechnical Evangelismチームマネージャーで、小売業のDXをLINE API観点から支援している比企宏之氏へのインタビューを全2回にわたってお届けする。 聞き手=大宮弓絵(本誌)、構成=兵藤雄之

    ※API=アプリケーションプログラミングインターフェース。組織や個人で持っている「データ」「アルゴリズム」「サービス」を、外部の他のプログラムから呼び出して利用できるように、手順やデータ形式などを定めた規約。これを活用することで利用者は、ソフトウェアサービスの提供において、すべての機能をゼロからすべて自社で開発する必要がなくなる

    カスミ「BLANDE」に見た
    国内小売DXの進化

    ――LINEといえば、日常生活で欠かせないコミュニケーションツールになっています。比企さんが率いているTechnical Evangelismチームとは、どのような組織なのでしょうか。
    比企 LINEでは、LINE公式アカウントやLINEミニアプリなどで提供している数々の機能を、各社でも活用していただけるように「LINE API」を公開しています。Technical Evangelismチームは、アプリ開発者の方々にその利用を働きかけていく部門になります。
     LINEの月間アクティブユーザー数は9200万人まで拡大しています(2022年3月末時点)。すでに多くの人が使っているLINEを、サービス利用のきっかけに活用することで、今までのアプリ開発よりもより手軽に、利用ユーザーの拡大に貢献できます。

    ――食品スーパーをはじめとした食品小売各社の消費者とのコミュニケーションについて、ここ最近ではどのように変わってきていると感じていますか。
    比企 ウォルマート(Walmart)やクローガー(Kroger)では、すでに自分たちの店舗をメディアとして活用する取り組んでおり、日本企業でもトライアルカンパニー(福岡県)やツルハ(北海道)などさまざまな企業さまが店舗のメディア化を進められています。
     小売企業各社が「リテールメディア化」を図る場合、2つの方向性があると思っています。1つは不特定多数から取得した購買データをメーカーなどに販売するケース。もう1つは、顧客とのタッチポイントを増やし、One to Oneで向き合い、顧客情報の解像度を上げ、商品・サービスをブラッシュアップするというケースです。

     最近までは、国内の店舗のデジタル化は、店内にセンサーをつけたり、サイネージで情報を流したりという、不特定多数の来店客に向けた施策にとどまっていると考えていました。しかし、カスミ(茨城県)が茨城県つくば市に開業した新業態「BLANDE」の2号店には驚きました。いち利用者としての目線ですが、ぱっと見た限り店内に設置されたセンサーは少なく、もし多くのセンサーがあったのだとしても、利用者に意識されないような形で設置されていました。

     またセンサーに頼るのではなく、自社アプリからの能動的な顧客への働きかけによりデータを取得し、アプリをコアにした顧客とのOne to Oneの関係構築を体現されていました。

     その他にもアプリ決済後、セルフレジと共通ゲートでの処理を可能にしていたり、「BLANDE Prime会員」専用の施設利用・サービスとの連携もできたりと、店舗とアプリが融合した店づくりとなっており、今後のOMO(オンラインとオフラインの融合)型店舗の見本となる存在だと思いました (視察は2022年4月に実施)。

     

    カスミの新業態「BLANDE」2号店である、「BLANDE研究学園店」では、OMO型店舗の見本となるようなさまざまな施策が見られる

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