元ファストリ上席執行役員が明かす!店舗を日本一に導く手法 トーチリレー神保代表【前編】
悩みを欲しがれば、スタッフの
モチベーションはアップする
――スタッフのモチベーションを上げる秘訣も「悩みを欲しがる」中にヒントがありそうです。
神保 現在、私がご相談を受けるなかで多いのが、「仕事が自分事化されないスタッフばかり」「給与を上げても頑張ってくれない」というもの。しかし、スタッフのモチベーション低下を嘆く前にお願いしたいのは、今、スタッフが何に悩んでいるかを知ろうとすることです。なぜなら、店舗が本質的に抱えている課題をいちばん知っているのは、スタッフだからです。一緒に働く同志であるスタッフたちの悩みは、店舗を写す鏡と言えます。
スタッフ個人の悩みを深掘りしていくと、実は現場全員が抱えている課題だということがあります。それなら「その悩みを解決するために何をしたらいいのか」をディスカッションし、そこで出たアイデアを店舗の経営課題に紐づけていけばいい。そしていざ変革という時点になると、その課題解決は個々人に寄り添った結果が反映されているので、スタッフにとっても自分事になっている。これが強みになります。
店舗を預かる店長が、スタッフに寄り添い、本気で悩みに向き合う姿勢を提示できれば、「自分のお店のトップは自分たちに真摯に向き合ってくれる」というカルチャーができあがります。そうなると、悩みがどんどん集まってきて、店舗改革の材料も見えてきます。
――スタッフの悩みから経営課題を見つけるというのは、これまでの人材活用とは逆の発想ですね。
神保 これまでは、経営や運営側が抱える課題をスタッフの仕事に分解し、落とし込むことがほとんどでしたが、それはもう制度疲労を起こしています。さまざまな個性を持った人間が組織に集まる今、このやり方ではスタッフは仕事を自分事化できません。そうではなく、逆のアプローチをとる方が結果的に、スタッフと一枚岩になって経営変革が進むのです。
強いビジネスや企業を生み出すのは、結局どこまでいっても人がすべてだと考えます。AIの登場で6次、7次産業も叫ばれていますが、1次以上の産業はすべて人が担っています。つまり、人は0次産業。あまりにも当たり前すぎてケアする対象にすらならなくなっている「人=0次産業」こそ、変えていく必要があります。まずはスタッフの悩みを本気で聞いてみてください。そこに業績向上のすべての答えが詰まっています。
神保拓也
トーチリレー代表取締役
元ユニクロ史上最年少上席執行役員
じんぼ・たくや●
1981年、神奈川県生まれ。中央大学経済学部卒業後、三菱UFJ銀行、外資系コンサルティング会社を経て、ファーストリテイリングに入社。人事部でのグローバル人材の採用や、社内経営者育成機関の立ち上げ・運営の実績を評価され、35歳で史上最年少の執行役員に抜擢される。その後、物流の改革責任者に業務未経験ながら就任し、倉庫の自動化を中心とした構造改革をわずか2年で実現。その成果から全社改革の責任者も任され上席執行役員となる。これらの半生から、部下・同僚・チームの「悩み」に向き合うことが組織の成長にもつながると確信。株式会社トーチリレーを2020年に設立し、心に火を灯す「トーチング」面談や、企業の悩み相談などのサービスを提供し、「心の聖火リレー」を広げていくことを提唱している。https://www.torchrelay.net/
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4月1日より、初の書籍を発売中!
「悩みは欲しがれ」
部下・同僚・チーム、あなたの心に火を灯す新常識
KADOKAWA 税抜1450円
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悩みは「不要なものか」と問われれば、私は「必要なものだ」とお答えします。それどころか、自分やチームの可能性を引き出してくれる「情報の宝庫」なのです。悩みの中には、過去の挫折やそれを乗り越えるためのヒント、チームが抱える問題の根本原因からその打ち手に至るまで、驚くほど多様で実践的な情報が詰まっています。本書では、この一筋縄ではいかない悩みとの「向き合い方」について、これまで千人以上の悩みに向き合ってきた私の経験を基に、さまざまな事例を上げて余すところなくお伝えしています。この本を通じて、一見ネガティブに思われる悩みを「遠ざける」よりむしろ「欲しがる」ようになってほしい。それが私の願いです。