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キーワードは“背徳感” ベーカリー部門でもヒットの予感「ルーサーバーガー」と「マヌルパン」

 健康志向が高まる一方で、食べる時に思わず“背徳感”を感じてしまうようなハイカロリーな食が人気を集めている。

 なかでも注目は、韓国から人気に火がついた「ルーサーバーガー」と「マヌルパン」だ。ルーサーバーガーは、バンズにドーナツを使用したアメリカ生まれのハンバーガー。マヌルパンはガーリックバターを染み込ませたパンに、砂糖やはちみつで甘みを加えたクリームチーズを挟んだ進化系ガーリックパンのことだ。人気の背景を探る。

ルーサーバーガー

意外な組み合わせが「映える」
ルーサーバーガー

 ルーサーバーガーの名前は、バンズにドーナツを使用していることから「ドーナツバーガー」とも呼ばれているが、その名はR&B歌手であるルーサー・ヴァンドロスに由来する。

 1979年におこなわれたライブのケータリングで、ハンバーガーのバンズが切れてしまい、ルーサー・ヴァンドロスが朝食の残りのドーナツを代用したことから誕生した。シュガーレイズドのドーナツの甘さと、パティの肉汁やソースがマッチし、甘じょっぱくクセになる味わいが特徴で、意外な組み合わせとインパクトのある見た目から広まった。

 そして近年のアメリカでは、ドーナツとフライドチキン専門店「アストロ ドーナッツ&フライドチキン(Astro Doughnuts & Fried Chicken)」の看板メニュー「フライドチキンサンドイッチ」が人気となった。ドーナツにサクサクのフライドチキンをはさんでいる点が話題を集めた。

 その人気が韓国にも派生。2020年に韓国KFCが「ダンキンドーナツ」とコラボし、ドーナツにフライドチキンをはさんだ「ドーナツバーガー」を発売した。多くのインフルエンサーが取り上げたことからSNSで話題となり、日本でも注目度がアップしている。

 ルーサーバーガーが備えるトレンドの要素は、「映え」と「背徳感」だ。ドーナツ×ハンバーガーのインパクトが「映える」ため、SNSで注目を集める。

 また健康志向が高まる一方で、「悪魔的」「カロリー度外視」などのキャッチフレーズが付くハイカロリー料理もトレンド傾向にある。こうした要素がルーサーバーガーの人気を後押ししているようだ。

プラントベースドフード(植物由来原料)を使ったメニューを提供する専門店「2foods」では、健康志向に配慮したルーサーバーガーを販売する

 トレンドをいち早くキャッチして、日本でもルーサーバーガーが食べられる店が少しずつ増えている。たとえば、食のセレクトショップ「DEAN & DELUCA」では、ココナッツをまとった焼きドーナツにケイジャンチキンなどをサンドしたドーナツサンドを、プラントベースドフード(植物由来原料)を使ったメニューを提供する専門店「2foods」では、植物性原料のみを使用した「ソイチキンタツタドーナツサンド」を販売。各社趣向を凝らした商品を開発している。

進化系ガーリックパン「マヌルパン」

 もう一方の「マヌルパン」もキーワードは背徳感だ。

 「マヌル(마늘)」は韓国語でニンニクという意味で、直訳すると「ニンニクパン」。韓国で人気の屋台グルメになっている進化系ガーリックパンを指す。

 いわゆるガーリックトーストとは異なり、たっぷりのガーリックバターを染み込ませたパンに、砂糖やはちみつで甘みを加えたクリームチーズを挟んでいるのが特徴。甘じょっぱさと食欲を刺激するガーリックの風味で一度食べたら病みつきになる味だ。韓国の屋台では、行列ができるほどの人気メニューになっている。

 このマヌルパンが、カロリーもたっぷりで、食べると「背徳感がすごい」という点でも話題になっている。SNSを中心に話題となり、トレンドを予感させる大注目の韓国発グルメだ。
 健康志向の高まりから「ギルトフリー」なグルメへの関心が高まるなか、思いきり真逆をいくところも注目のポイントと言える。

マヌルパンはたっぷりのガーリックバターを染み込ませたパンに、砂糖やはちみつで甘みを加えたクリームチーズを挟んでいる

 日本では、「俺のBakery」とグルメインフルエンサーがコラボし、韓国のマヌルパンを再現した「俺の罪悪パン」が5月15日から期間限定発売され話題になった。店頭では2週間で約1万個を販売、ECサイトでも11分で完売するほどの人気となった。

 下町の人気ベーカリー「オットポン」(東京都墨田区)や三重県・愛知県で11店舗を展開する「513BAKERY」など、マヌルパンを発売するベーカリーやカフェも少しずつ増加し、じわじわと人気が広がっている。

韓国グルメ×パンブームが今後の追い風に?

 ハンバーガー業界は、外出自粛やフードデリバリーサービスの普及などから、外食大手も続々と参入し戦国時代に突入している。そうしたなか、従来のハンバーガーに多ジャンルの料理をかけあわせた進化系ハンバーガーが増加中だ。ルーサーバーガーも今後は、従来のハンバーガー×ドーナツの域を飛びだしたメニュー開発が期待される。

 マヌルパンについては、新型コロナウイルス感染拡大下での生活者の食への意識変化により、お店の味を自宅で再現しようと試みる生活者も増加している。家庭でパン作りを始める人も増え、ホームベーカリーの売れ行きも好調だ。こうした傾向から、外食、内食問わず、マヌルパンの人気もさらに高まっていきそうだ。

 両者に共通するのは、罪悪感がありながらも、至福のご褒美グルメとして生活者にウケている点だ。高カロリー過ぎるがゆえにSNSでシェアしたくなるというのも、人気が広まっているポイントの1つと言えるだろう。

 ここ数年続く日本でのパンブームと韓国グルメブームにも後押しされる形で、ルーサーバーガーとマヌルパンという進化系ベーカリー商品への注目は、広がっていきそうだ。


【媒体紹介】

食のビジネスメディア「FoodClip(フードクリップ)」
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