アバクロンビー&フィッチのいま
米アバクロンビー&フィッチ(A&F)の元気がない。
現在は19か国に969店舗を展開。大学生向けの「アバクロンビー&フィッチ」(Abercrombie & Fitch)、12~18歳向けの「ホリスター」(Hollister)、12歳以下を対象にした「アバクロンビー キッズ」(abercrombie kids)の3ブランドで快進撃を続けてきた。
創業は1892年。当初は、キャンプ・狩猟用品を扱う専門店だった。その後、スポーツ専門店に業種替えをしたものの、苦境の時代を経験。1988年に米アパレル専門店のリミテッドの傘下に入った。
当初、再建は、うまくいかなかったが、リミテッド創業者のレス・ウィクスナーがフェデレーテッド百貨店出身のマイケル・ジェフリー(前:会長兼CEO〈最高経営責任者〉)をスカウトしたところから風向きが変わった。
商品デザイン、店舗内装、店内照度、振り撒くコロンの量、音楽の音量、若い男女のセクシーなパネル、値引きしない方針…すべてはジェフリーが指示を出し、顧客に受け入れられた。1990年代半ばに定義したブランドコンセプトは、その後ずっと不変だった。
1996年に株式を公開し、順調に成長していく。
しかし、2004年に20歳代後半をターゲットにした「ルール ナンバー 925」(Ruehl NO.925)が失敗した辺りから、凋落が始まる。
リーマンショックのあった2008年に既存店売上高は対前期比13%減、2009年度は同23%と大幅に落ち込んだ。
2014年の売上高は37億ドルと同9%減、既存店舗売上高は同8%減。ブランド別の既存店舗売上高は、アバクロンビー&フィッチが同4%減、アバクロンビー同7%減、ホリスター同10%減となった。
ジェフリーは、過去の成功にこだわり続けたが、同社のかつての顧客は価格の安い「Forever21」や「H&M」に流れた。顧客は変わったが、同社は変わらなかった。
そして2014年にジェフリーは会長職を解かれ、A&Fのひとつの時代が終わった。
アーサー・マルチネス会長(シアーズ・ローバック元CEO)は、「2014年はA&Fにとって意義深い変化の年だった。2015年は品揃えを進化させ、カスタマーエクスペリエンスを向上させることで国内外の既存店をアップトレンドに変える。また、DTC(顧客直結)とオムニチャネルビジネスに投資する。そして、ローコストの効率運営に努めたい」と抱負を語っている。
※出張のため明日のBLOGはお休みします。次回の更新は6月29日(月)になります。
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