ヤオコーが新中期経営計画を発表

2015/05/12 00:00
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 ヤオコー(埼玉県/川野澄人社長)は、2015年3月期決算を発表した。

 連結の業績は、営業収益3073億5400万円(対前期比12.1%増)、営業利益134億7000万円(同12.3%増)、経常利益133億4200万円(同12.7%増)、当期利益78億3400万円(同10.2%増)と23期連続の増益を達成。単体では、26期連続で増収増益を達成した。

 営業収益の2ケタ増を牽引したのは既存店舗だ。通期では対前期比5.1%増と絶好調。①FSP(=ヤオコーカード)効果(会員数176万人、会員売上比率77%)と価格コンシャスの浸透、②開店時刻を前倒ししたことによる午前中の売上増加、③精肉部門を中心に生鮮部門の好調(既存店成長率=同8.9%増)が既存店舗の売上増加を後押しした。

 また、期中には、ミノリア稲毛海岸店(千葉県)、秦野店(神奈川県)、相模原光が丘店(神奈川県)、鴻巣免許センター前店(埼玉県)、ララガーデン春日部店(埼玉県)、八潮店(埼玉県)、志木本町店(埼玉県)、南流山店(千葉県)、川越西口店(埼玉県)の9店舗を出店し、期末店舗数は142店舗になった。さらに、ワカバウォーク店(埼玉県)、入間仏子店(埼玉県)など既存10店舗に大規模改装を施し、これらが好調に推移した。

 

 経費関係では、人件費は、生産性向上の取組効果と採用難による人員不足から人件費率は減少した。

 生産性向上の具体的な取組は、1つにモデル店舗における作業カイゼンが挙げられる。開店前の「朝一」作業を確立し、全店へ横展開するというもの。すでにモデル店舗では開店後の「朝二」以降の作業確立に乗り出している。

 2つめは、システム化による作業カイゼンだ。センターでのカテゴリー別仕分けや、棚卸計算システムの導入がこれに当たる。3つめは、寿司部門でのシャリマシーン導入など機械化による作業カイゼンである。

 なお、水道光熱費は、電気使用量の削減には努めたものの、電気料金の値上げにより対前期比では増加。減価償却費は、新規出店およびデリカ・生鮮センターへの投資、ワカバウォーク取得などの影響で増加している。

 

 2015年3月期の運営方針は、「他業態からもシェアを奪い、全店が『圧倒的な一番店』となること」だった。

 この実現に向けて、営業政策の重点テーマとして、「ヤングファミリー層の支持獲得」「商品開発・育成の強化」「筋肉質な企業体質の実現」を掲げた。

 

 「ヤングファミリー層の支持獲得」では、「横綱まんぷく祭り」と称して、から揚げや餃子など人気商品の量目を増やしたり、生鮮食品の大量目商品である「エンジョイパック」を充実させた。また、ヤングファミリー層の購入比率が高い「たこ焼き」を「たこパー」(たこ焼きパーティ)コーナーとして展開。一部の店舗ではたこ焼き器を販売することで、素材の売上増加につなげた。

 また、消費税対応と価格コンシャスを強化した。2014年4月からは毎月約300アイテムを「いい値! なっ得!」として展開。冷凍食品は、一部店舗からEDLP(エブリデー・ロー・プライス)強化をスタートさせ、割引セール並みの価格に見直しをかけた。

 さらには、ライフコーポレーション(大阪府/岩崎高治社長)との共同開発PB(プライベートブランド)「スターセレクト」の開発に注力し、期末には対前期比77アイテム増の107アイテムになった。なお、2014年10月には「スターセレクト誕生一周年キャンペーン」を共同で実施している。

 

 加えて、2015年2月16日には、有職主婦や子育て世帯も意識して、半径1キロ圏内の商圏シェアを高める施策として、三芳藤久保店(埼玉県)でネットスーパーを開業した。

 店舗ピッキング方式による運営で、2015年4月末現在の会員数は378人。今後、1号店の結果を踏まえ、エリア・店舗の拡大を検討する。

 

 このようにヤングファミリー層の支持獲得諸政策を積極的に敢行したが、結果として売上高構成比は低下している。原因はシニア層からの支持がヤングファミリー層以上に大きかったためだ。しかしながら、ヤングファミリー層の既存店舗純客数は通年で対前期比を上回っており、ヤオコーはまったく悲観していない。

 

「商品開発・育成の強化」では、生鮮部門の強化にとくに努めた。既存店舗対前期比12.4%増と精肉部門では「ラム」や「牛タン」の売り込みを強化するとともに、希少部位のローストビーフなど品揃えを充実させた。また鮮魚部門では「今朝水揚げ産直」、青果部門では「今朝採り産直」などの商品強化に取り組んだ。

 

 PB商品は、2015年3月末現在、「Yes! YAOKO」が553アイテム、「スターセレクト」が107アイテム、「ヤオコー仕様商品」が294アイテムの合計954アイテムを展開。売上高構成比は対前期比0.5ポイント増の8.8%になった。

 課題として取り上げているのは、プレミアムPBの開発で、1バイヤーが最低1品を通年で開発したい意向だ。

 ヤオコーは「名物商品」の開発にも力を入れている。「名物商品」の定義は、目的来店の誘因となる商品であり、「遠距離」「低来店頻度」の消費者の買い上げ比率が20%以上と高いことである。現在は「手握りおはぎ」や「手作りカレーパン」がこれに当たり、さらなる商品数拡大をめざしている。

 そして、2014年6月からデリカ・生鮮センター(延床面積6170㎡)が稼働。インストア加工とアウトパック加工を柔軟に組み合わせながら、商品力強化を図っている。

 

 さて、2015年3月期は、ヤオコーの第7次中期経営計画の最終年に当たる。

 川野社長は総括して、「数値目標は達成でき、既存店舗も好調だったが、今後の収益向上には98.2%→100.3%→101.9%と微増で推移する『客数』アップが重要だ」とコメントした。

「新しいお客さまをチラシ販促や謝恩キャンペーン、ネット、口コミなどを通じて獲得していきたい。何よりも従業員の方々にヤオコーの良さを理解してもらい、身内からファンになってもらいたい」(川野社長)。

 

 また、第7次中期経営計画の重点政策についての振り返りを行った。

 

 ●生鮮(デリカ)強化 評価○

  精肉部門の支持拡大を中心に生鮮全体の売上数字が向上

  鮮魚の看板部門化に課題

 

 ●カスタマー確保 評価◎

  FSPの全店導入を完了、座談会など消費者の声を聞く取組開始

  ヤングファミリー層の客数増には依然課題

 

 ●先進的なMD(商品政策)の開発 評価×

  東大和店(東京都)開店に向け商品開発が進捗、PB「スターセレクト」の発売

 「名物商品」の開発、旬・主力商品での差別化に課題

 

 ●店舗間格差の縮小 評価○

  既存店舗の大規模改装による最新品揃えの導入が進捗

  その進捗は限定的で、計画的な改装や修繕の実施が課題

 

 ●生産性の向上 評価○

  モデル店舗での「カイゼン」が進捗、アウトソーシングと機械化の導入

  ITによる業務サポート、店舗作業量の大幅軽減が課題

 

 ●従業員満足度の向上 評価×

  新人事制度の導入、採用方法の変更、中途採用の増加などに進捗

  人員不足と長時間労働解消、新任者への教育が課題

 

  ヤオコーは、この結果を受け止め、第8次中期経営(3か年)計画を発表している。

 

 メインテーマは「スーパーではなく、『ヤオコー』と呼ばれる存在へ ~妥協せず、厳しく、次のステージの土台を作り上げる~」。同質化競争を勝ち抜くには、固有名詞で呼ばれる会社にならなければいけないという思いが込められた。

 最終年度の2018年3月期の業績を売上高3400億円、経常利益145億円、経常利益率4.3%、期末店舗数166店舗と定めた。既存店舗の売上増による成長が柱となる。

 

 その実現に向けて、《商品・販売戦略》としては、圧倒的な商品づくりに取り組む。

 美味しさで選ばれるお店をめざして商品力強化に努めるとともに、「お客さま目線」での売場づくりに力を注ぐ。

「まだ全店舗での導入はできていないが、『おかずバイキング』や『煮豚』『鮮魚部門の素材を使った寿司』『今朝挽きの鶏肉』などチャレンジ的なMDの成功事例も出てきているので、横展開をめざしたい」(川野社長)。

 

 《運営戦略》としては、機械化・IT化を推進。高付加価値業務に集中することで生産性を向上させる。また、本部は、店舗サポート機能の強化を図る。

 

 《育成戦略》としては、人材が育つ仕組みづくりと人材育成を推進(成果=考え方×やる気×能力)。そして働きがいのある会社ナンバーワンをめざす。

 

 《出店・成長戦略》では、約1500万人が居住し、食品支出額約4兆円の首都圏内20~40キロのドーナツエリアのシェア12.5%(=5000億円)の獲得を目標に据えた。

 年間10店舗の出店を進めるとともに、新しいモデル店舗や次期成長に向けてネットスーパーや小型店舗を出店する。

「広域商圏のららぽーと富士見店型や600坪の小商圏対応小型店など次世代型モデルを次の3年間以内でつくりあげたい」(川野社長)。

 

 第8次中期経営計画の初年度に当たる2016年3月期の業績予想(単体)は、営業収益3190億円(対前期比7.8%増)、営業利益134億円(同8.4%増)、経常利益130億円(同3.2%増)、当期利益87億1000万円(同2.0%増)。既存店舗売上高は同1.0%増(上期同2.0%増、下期横ばい)を想定し、27期連続の増収増益を予想する(三味の吸収合併、日本アポックの事業譲渡により、予想は単体のみ)。

 

 その初年度となる2016年3月期の基本方針は、「『豊かで楽しい食生活』の実現に向けて大きく前進する」こと。①業務の改革、②商品の改革、③「働き方」の改革に取り組むことで達成をめざす。

 

 まず、①業務の改革は、「お店が力を発揮できる仕組みづくり」に注力。採用・育成(時給増による採用人数増加)、カイゼンの拡大(清掃作業の標準化などモデル店の取組の横展開)、作業量の削減(機械導入、センター活用、アウトソーシング活用)を実践する。時給単価の上昇を作業削減で相殺させる。

 

 次に②商品の改革では、「お客さまに美味しさ・鮮度で信頼される商品づくり」に努める。

 基本を徹底し、旬・主力商品の支持を向上させる。また、「お客さまの声」のフィードバック、価格コンシャスを心掛けながらヤングファミリー層の支持獲得を継続する。さらに、今年4月に開業したららぽーと富士見店(埼玉県)での実験的な取組を続けることで名物商品づくりに拍車を掛ける。

 

 そして、③「働き方」の改革は、「一人ひとりが活き活きとやりがいを感じられる環境づくり」に励む。

 働きがい・働きやすさを同時に向上させ、「ワークライフ充実」を実現。「全員参加の商売」を実践しながら、従業員の「健康」づくりをサポートする。また、女性従業員がより活躍できる仕組み・制度を導入するなどダイバーシティの取組強化を図るとともに、教育体系の再構築を進める。

 

 新規出店は、前述のららぽーと富士見店、検見川店(千葉県)、朝霞岡店(埼玉県)、柏高柳駅前店(千葉県)のほか2店舗の合計6店舗。既存店舗の大規模改装は、スクラップ&ビルドも含めて11店舗で実施する計画だ。
 

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