「事件は現場で起こっている」から
時代は、便利になったもので、私たちのような記者・編集者は、インターネットを通じて多くの企業情報を入手できるようになった。
20世紀には、決算特集を組むに際して、有価証券報告書を閲覧するために大蔵省の門を叩いて、1ページずつコピーを取っていたことを考えれば、その手間ヒマは格段に軽減されている。
店舗情報もしかりだ。
各企業から発せられるプレスリリース各種は、かゆいところにまで手に届く詳しい情報が盛り込まれており、あっという間に2~3ページ分くらい書けてしまう完成度の高いものもある。
そう。いまや記者・編集者は、オフィスの心地よい椅子に座り、パソコンのキーボードを叩き、ホームページを訪ねていれば、記事をふつうに書くことができる。
実際にそんな仕事をしている人たちもいるのかもしれない。
私たちも、締め切りが迫っている原稿は、あらかじめプレスリリースを元に《予定稿》を書き、現場に向かうこともある。
しかしなのである。
現場に行くと、《予定稿》の世界は、ことごとく否定される。
担当者の方から直接話をうかがえばプレスリリースとの微妙なニュアンスの違いを発見したり、中にはプレスリリース自体が間違っているものもある。
「あのまま入稿しないでよかった」と胸をなでおろすこともある。
当たり前のことなのであるが、「事件は現場で起こっている」(青島俊作)のである。
そして、それこそが『ダイヤモンド・チェーンストア』誌が現場での取材をとても大切にしている理由なのである。
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