ニトリ 28期連続増収増益を達成
ニトリホールディングス(北海道/似鳥昭雄社長)は2015年2月期決算を発表した(@ANAインターコンチネンタルホテル東京)。気管支炎を患う似鳥社長の声はかすれ、時折鼻水をすするなど元気のない表情を見せていたが、業績は元気そのものだった。
連結売上高は、4173億円と初の4000億円超え。経常利益は679億円と28期連続の増収増益を達成した。概要は以下の通り。
・売上高4172億8500万円(対前期比7.7%増)
・粗利益高2183億3700万円(同8.3%増)
・販売管理費1520億2900万円(同9.7%増)
・営業利益663億700万円(同5.1%増)
・経常利益679億2900万円(同7.0%増)
・当期純利益414億5000万円(同7.9%増)
2014年4月の消費税増税や急激な円安などの厳しい経済環境を見事増収増益で乗り切った似鳥社長は回顧する。
「創業以来、逆風の時こそ逆にチャンスがある、と信じて経営に当たってきた。もう逆風は慣れている。従業員教育にも逆風は良い。順調だと従業員も慢心するが、全員経営に取り組むことで苦境を乗り切った。円安は1円で15億円の為替損が発生するけれども、通年で10円以内の円安であれば対応できる仕組みを整えているし、一昨年の12円との比較で言えば昨年は7円だったので許容範囲内だった。消費税対策としては、リーマンショック以降、8回にわたって値下げを敢行し、低価格を実現してきたが、商品政策的に中価格帯強化に努めることでお客様単価増を狙ったことが功を奏した」。
既存店舗の動きを見ると、売上高は対前期比1.6%増。客数は同2.0%減を喫したものの、同社の思惑通り、客単価は同3.6%増加している。
「既存店舗は過去3年間にわたって成長している。けれども、客数減は当社の課題であることに間違いない。自社競合や自社通販に流れている傾向はあるけれども、ハウスカードを分析すると、リピートがないお客様もいらっしゃるので対策を講じたい」(似鳥社長)。
出店については、2015年2月期中に「ニトリ」業態を33店舗、小型店の「デコホーム」業態12店舗を開業。3店舗を閉鎖したことで国内の期末店舗数は346店舗となった。
また、国内物流網の再構築を企図して、敷地面積約10万6000㎡の幸手物流センター(仮称、埼玉県:2018年稼働予定)と敷地面積約3万2000㎡の神戸物流センター(同、兵庫県:2017年度稼働予定)の契約を締結した。
外部からは国内店舗の飽和化が指摘されているところが、次期成長に向けての布石は着々と打ってあり、2015年2月期は、台湾に「ニトリ 宜得利家居」を3店舗、また中国にも初進出を果たし、「武漢群星城店」(10月1日開業)、「武漢金銀譚イオンモール店」(12月19日開業)を「NITORI 家具&家居」業態で出店した。
2013年2月期に進出を果たした米国には、似鳥社長の名前から命名した「AKI-HOME」業態を3店舗(「トーランスストア」「フォンタナストア」「チノストア」)出店している。
さて、2016年2月期の主要施策の骨子は5つから構成される。
1つめは、「商品戦略と供給体制の再構築」だ。
グローバル化に向けた商品開発体制の構築に乗り出し、商品や副資材の共通化や産地工場の新規開拓を進める。また、バーチカルマーチャンダイジング(垂直統合)を推し進め、自社で原材料を調達するとともに帝人(大阪府/鈴木純社長)などの他社素材や新機能素材を積極的に活用する。さらに、グローバル商品供給システムの構築を図り、最適化をめざす。そして、各国出店に合わせた物流拠点を設置する。
2つめは、「品質管理体制の強化」である。
取引先への「工場経営塾」を開催し、工場の運営だけでなく、経営の技術を指導する。また海外での技術評価を受けるべく、設備や人材の育成に注力。さらには、商品使用途中の安全喚起など安全に向けた施策を拡大する。
3つめは、「販売力の強化」だ。
家具接客とセルフサービスの両方を強化。またオムニチャネル化を実現させ、顧客の買物利便性向上を図る。「ブランド」の認知向上も継続する。
4つめは、「事業領域」の拡大だ。
脱飽和を意図し、国内外の新たな市場開拓に努める。新規育成事業としては、小型店の「デコホーム」、法人事業、通販事業、ファシリティ、ホームロジスティクス外販、パブリック、モール事業などを挙げている。
最後の5つめは、「人材教育と組織体制の再構築」である。
スペシャリスト人材、グローバル人材の育成を図り、国を超えた人事異動を実施する。そして家庭と仕事が両立できる環境整備に取り組み、女性とシニアを積極的に登用するとともに介護問題への取組も進める。
なお、2016年2月期の出店計画は、国内では「ニトリ」業態が25店舗、「デコホーム」業態が15店舗、台湾6店舗、中国5店舗、米国3店舗の合計54店舗となっている。
こうした取り組みを実施しながら、同社が掲げる目標は下記の通りだ。
・売上高4450億円(対前期比6.6%増)
・粗利益高2370億円(同8.5%増)
・販売管理費1660億円(同9.2%増)
・営業利益710億円(同7.1%増)
・経常利益720億円(同6.0%増)
・当期純利益436億円(同5.2%増)
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