「新入社員に期待する」 2014年4月1日、岡田元也イオングループCEOが入社式で語ったこと(上)
イオン(千葉県/岡田元也社長)は、4月1日、「イオン入社歓迎の集い」(Meet The New AEON People 2014)を開いた(@幕張メッセ)。イオングループの国内55社の新入社員約2600人に加え、中国・アセアン10カ国の社員約680人を中継で結んだ。岡田元也グループCEO(最高経営責任者)は何を語ったか?
今日、明日2回に分けて掲載する(談:文責・千田直哉)
新入社員のみなさん入社おめでとうございます。
本日は、中国、マレーシア、タイ、ベトナム、インドネシア、カンボジア、ミャンマー、ラオス、フィリピン、インド、日本の11カ国の仲間がテレビ中継も含めてここに集った。
2014年は、日本約3200人、日本以外約1300人、グループ全体で約4500人が本日新たにイオンピープルの仲間入りをしてくれた。
世界中の新しく若いイオンピープルと一緒になれたことを本当にうれしく、頼もしく思う。
今日(4月1日)から日本では、消費税率が5%から8%に上がった。
イオンの店舗には、昨日までお客様が大勢押し寄せ、在庫が空っぽになるような状態が1ヶ月半くらい続いた。しかし、今日からの商況は非常に厳しくなる。
消費税増税は、とくに収入の少ないお客様にとって負担増となる。
サプライチェーンの整備やソーシング活動の強化など、全力を上げて、極力、お客様の負担が少なくなるような努力が望まれる。
ヨーロッパの先例を見てみると、増税のたびにディスカウンターが勢力を増している。それだけお客様は価格に敏感なのである。
裏を返せば、増税は私たちにとって、大いなるチャンスだ。企業としてできうる最大のことに努めていかなければならない。
さて現在、イオンは、アジアナンバーワンのリテーラーを目指す途上にある。
飛躍的な成長の第2フェーズ――。
2014年度を初年度にする中期経営計画でも、アジア注力は、イオンの4大シフト(大都市シフト、シニアシフト、デジタルシフト、アジアシフト)のひとつとして数えられている。2016年度の海外営業収益の目標は1兆円だ。
イオンは、18世紀に地方に興り、1969年には関西を基盤とする企業に成長し、1970年代~1980年代を通じて全国に拡大し、全国チェーンとなり、1980年代後半からは世界、アジアに進出をして現在の姿となった。
このように発展していく中で、イオンは常に「お客様第一」を標榜し、それを信じる人間の集まりになっている。
イオンの歴史を振り返ると、18世紀の呉服屋(岡田屋)の時代から現在に至るまで、普通の人々=ミドルクラス=中産階級の方々とともに発展してきた。
そして現在、アジア全域に中産階級が急増している。
もっとも購買力があり、発展する人たちであり、農村から都市に移住し都市化を進め、新しく産業を興す――。そんな軌跡を辿っていく。
このアジアの中産階級の方々に対して最大限の努力をし、最大限の評価をいただくことで、イオンは新しい発展をしたいと考えている。
こうしたアジアシフトの最新の事例をあげるなら、2014年1月11日、ベトナムのホーチミン市に延床面積7万8000㎡のショッピングモール「イオンモールタンフーセラドン」を1号店としてオープンさせたことだ。お客様からは非常に高い評価を得ている。
間もなく2号店、その次にはハノイ市内にも開業する計画だ。
ベトナムには、コンビニエンスストアのミニストップも展開している。
両者ともに課題を抱えてはいるが、それが解決できればベトナムにおいて大きな存在になれる。イオンクレジットサービスなどのグループ各社も含めてベトナムのお客様からの支持をもらえるようにしていかねばならない。
一方、日本では、ステージが変化し、中産階級の方々の高齢化が進んでいる。それが、イオンは、高齢社会対応(シニアシフト)に傾注していかねばいけない理由だ。
イオンは、ごく普通の人たちが安心で安全な生活をし、より良く楽しく快適な生活ができるように様々な商品やサービスの提供をし続けていかねばいけない。
その際に重要だと考えるのは、小売業は、人間産業であり、地域産業であり、平和産業であることだ。
人間産業ということでは、みなさんの力はそのまま、会社の力になるといっていい。イオンでは、国家はもちろん、宗教や人種、学歴や性別を一切問わない。自分の実力だけで、自分のしたいことが達成できる平等で公平な集団だ。
昨今は、これまで以上に多様性を尊重し、追求をすることに力を注いでいる。
地域産業ということでは、小売業やサービス業は、地域あっての物種である。
今後は、アジアに目を向けて拡大していくわけだが、アジアは広く、ひとくくりにすることなど到底できない。ひとつひとつの国々、国の中の各地域を重視しなければいけない。そこには、非常に多様な人々が住み、多様な生活があり、地域によって、お客様が求める消費やサービスは大きく異なる。
そのことを理解した上で、地域の発展とともに私たちも発展することが、小売業は地域産業という意味合いである。
そして、こうしたことの積み重ねが最終的には平和に貢献できると考えている。
だから小売業は、平和産業なのである。
(明日に続く)
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