「健康」を売る!(上)

2014/02/12 08:00
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 食品スーパーの同質飽和化については、このBLOGで何度か書いてきた。

 

 結論から言えば、同業他社と比較したときに、あまり特徴のない食品スーパー企業は、何がしかの差別化に乗り出さなければ、生き残ることが難しくなる可能性があるということだ。

 そこで、差別化策の候補のひとつとして、考えてみたいのが、“健康”ケアを軸に据えた食品スーパーチェーンの展開である。

 

 “健康”ケアを軸に据える根拠はいくつかある。

 

 ひとつには、超高齢社会のさらなる進展である。高齢者の理想とする末期のひとつは、「PPK」だ。前日まではピンピン(PP)しており何の予兆もなかったのに、翌日にはコロリ(K)と最期を迎えるというものである。

 子供たちに迷惑をかけたくない。孫たちと一緒にどこかに行きたい――。

 そこには、生きているうちは健康でありたい、という「健康寿命」の伸長願望がある。

 

 その実現に向けては、病気予防に努め、自己防衛していかざるをえない。

 これまでの高齢者は病院に通いづめ、主治医である町医者に“健康”をケアしてもらっていた。だから、病院の待合室は、お年寄りの寄合処と化していた。

 

 しかし、今後は、こうした光景は見られなくなるかもしれない。

 43兆円の税収で92兆円の国家予算を組むという異常な赤字財政が続く日本で、政府は医療費の国庫負担削減方針を明らかにしているからだ。

 本人負担率がさらに上昇するとなると、高齢者はおちおちと病気にかかっていられなくなり、よりいっそう自己防衛に専心するほかない。

 その有効策のひとつが、医食同源の発想から来る食事のケアである。

 

 自己防衛に努めなければいけないのは、高齢者に限ったことではない。2つ目の根拠は、成人病予備軍である。

 糖尿病(予備軍を含むと2210万人)、脳卒中(総患者数137万人)、心臓病(86万人)、脂質異常症(潜在患者含むと2200万人)、高血圧(潜在患者含むと4000万人)、肥満…日本人の3分の2が亡くなっていると言われる生活習慣病にも医食同源は効果を表す。

 毎日の食事を留意し続けることで、生活習慣病はある程度、回避できる。

 

 3つ目の根拠は、アレルギー問題である。食物5大アレルギー(タマゴ、牛乳、小麦、そば、落花生)はもちろんのこと。原因食物は非常に幅広く、アレルギーを持つ人にとっては死活問題だ。

 しかも、アレルギーは単純に持ち主個人だけの問題ではない。家族の中にアレルギー持ちがいる場合には、世帯全体が食物を気にしなければならないからだ。

 そして、ここにも日々の食事の重要性がある。

 

 いま挙げた3つのケースを合わせると対象市場は、国民の50%以上を優に超えるはずだ。共通のキーワードは「自己防衛」と「医食同源」である。

 

 こうしたトレンドを先取りして、“健康”市場に力強く歩を進める小売企業も出てきた。

 

 代表格は、先般、都市型食品スーパーの展開も発表したコンビニエンスストア企業、ローソン(東京都/新浪剛史CEO〈最高経営責任者〉)だ。この市場のリーディングカンパニーにならんと名乗りを上げている。

 

 これまで「まちのホットステーション」を標榜していた同社は、キャッチフレーズを「まちの“健康”ステーション」に変更。小型店舗の利を生かしながら、以下のような、具体策を実践し始めている。

 

 ・ナチュラルローソン(美と健康を考えたライフスタイルをサポートする)の展開

 ・国産野菜の強化と中嶋農法拡大

 ・ローソンファームの野菜拡大

 ・ブラン(小麦外皮:小麦粉より糖質が少なく栄養成分を多く含む)パン拡大

 ・ヘルシーオイル使用

 ・タニタ(東京都/谷田千里社長)監修商品

 ・調剤薬局クオール(東京都/中村勝社長)との共同出店

 

(明日に続く)

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