やらなきゃよかった
「やらなきゃよかった」と仕事の結果に後悔することはないだろうか?
私事を言うなら、交通費と人件費をかけ、取材をして、記事を書き、デザインを施し、印刷された出版物に、固有名詞や数字など言い訳のできない誤り(誤字・脱字を含む)を見つけた時だ。
「鈴木社長」なのに「田中社長」と刷られた雑誌があがってきた時には、もう目も当てられない。
天下のヒトとカネを費やして、ゴミをつくってしまったようなものである。
しかも、誤りがあった場合は、それだけで終わるわけではない。
取材先への謝罪連絡や訂正文執筆・掲載の手配、読者信頼の回復と事後処理にも多くの時間とコストを要することになる。
もし、その記事を書かずに、何もしていなければ、これら全ての時間とコストを費やすこともなく、誰もが幸せにいられたものに――と後悔しながら想像を巡らせてしまう。
同じようなことは、スポーツのリーグ戦についても言える。
もし、試合をしなければ、常に0勝0敗で勝率5割をキープしておくことができる。
しかし、リーグ戦が始まり負けが込み出せば、次第に借金は増えていき、結果として開幕時の無借金の状態がもっとも良い成績になってしまう。
そうすると、何もしないことがリスク回避の最善策のようにさえ思えてくる。
けれども、それも何か違う、と漠然と考えていた折に、見つけたのが次の名言である。
「船は港にいる時、最も安全であるが、それは船が作られた目的ではない」。
ブラジルの小説家・作詞家であるパウロ・コエーリョの言葉だ。
我々にとっての船は仕事だ。
我々は仕事をしなければ自身の価値を実現することができない、と理解した。
「企業は、それを構成している全資源より、より多量の、ないしより良質の財を生産することができなければならない」と言ったのは、P・F・ドラッカー教授だ。
これは、企業というものは活動をしなければいけないことを暗示している。
そして、「やらなきゃよかった」という後悔をしたくないからこそ、万全の準備を整え、安全には気をつけて、航海を続けていきたいものだ。
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