ミラード・ドレクスラーのクリエイティブ・サクセス信条
ミラード・ドレクスラー(69)をご存じだろうか?
アパレル業界に籍を置く方は、「当然」と答えること必至だろう。現在、ドレクスラーは、J.クルーのCEO(最高経営責任者)としてその名を轟かせている。
生まれは、1944年。アン・テイラーやブルーミングデールズ、メイシーズでキャリアを重ね、1970年代半ばには、ニューヨーク州ブルックリンのアブラハム&ストラウスのマーチャンダイジング担当副社長に就任した。
だが、ドレクスラーが巷間に知れわたるようになったのは、GAP(ギャップ)の“中興の祖”としてだ。
リーバイスの販売店に過ぎなかったGAPに製造小売業(SPA)のシステムを組み込み、急速に業容を拡大し、世界一のアパレル企業に育て上げたのだ。
ドレクスラーの手法は、抜きんでた商品政策に加え、テレビ広告に若いモデルを起用し、『メローイエロー』や『ドレスミーアップ イン ユア ラブ』などのキャッチーな楽曲を流すこと――。
GAPを全米のカジュアルシーンの象徴的なブランドに磨き上げるとともに、「バナナリパブリック」を買収し、セカンダリーラインの「オールドネイビー」を立ち上げ、GAPを年商140億ドルの企業にまで成長させた。
ところが、GAPをさらにファッション性の高いブランドに転換させようとしたところ、失敗。2002年にGAPの創業者であるドナルド・フィッシャーによって、突然解雇されてしまう。
しかし、ドレクスラーはそんなことで沈んでいない。捲土重来。2003年にJ.クルーのCEOに就任すると、当時は無名だったジェナ・ライオンズ(現:クリエイティブ・ディレクター兼社長)をデザイン企画担当に抜擢し、2007年には、彼女をクリエイティブ・ディレクターに引き上げ、改革の手腕をふるった。
ドレクスラーが入社した当時のJ.クルーは、約4000万ドルの赤字を計上する企業だったが、新デザイナーと登用と新しい商品政策によってZara(ザラ)やH&Mよりは高く、「アレキサンダー・ワン」などのブランドよりは安いというポジションを構築。446店舗を展開し、2012年度の売上は22億ドル(対前期比20%増)を計上し、黒字化も果たした。
現在は米国、カナダのほか、イギリスにも進出。さらには、香港への出店も予定しており、ドレクスラーのアパレル分野における商才が半端ではなかったことを証明する格好になっている。
ドレクスラーにクリエイティブ・サクセスの信条を尋ねると、① いいアイデアは悪いアイデア、②企業体質はオフィスに現れる、③むやみに成長を追いかけるな、④あえてリスクを冒せ、⑤これから5年でできることを考えよう、⑥顧客の立場で考えろ、⑦品質の高さはコピーできない、⑧感情的にデータを読み取れ(出所:『Wired』誌〈翻訳:I・H〉)と返ってきた。
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