新聞の旧聞
新聞。
新聞(=ニュース)は、その名の通り、新しい話題や事柄を伝える媒体だ。
だから、目線は常に新しい方向――。過去ではなく、現在以降を向いている。
スクープ合戦は、その象徴であり、まだ誰も知らない情報を追い求めて各社の記者たちは「抜いた」「抜かれた」と必死だ。
一方で新聞には、旧聞はあまり掲載されない。
それゆえに困っていることがある。
後ろを振り返ることに疎くなり、過去に何があったのかを忘れてしまうのである。
とくに、生活にも仕事にも直接はかかわらない政治関係に絡む旧聞の場合は、1年前に起こったことでさえ覚えていないことが普通だ。
その最たる例は、選挙候補者の過去の功績・罪過についてである。
現在、東京都は、都知事選挙戦のまっただなかにあるのだが、候補者がどんな活動をして、実績を残した人物であるのかは、新聞の記事を見ても毎回は出ていない。
出てくるのは、今後の政策や主張ばかりだ。
確かにそれは大事なことであるのだが、その人物が一体、どんなキャリアでどんな仕事をしてきたのか? 人物としての性格や性質はどうなのか?
そんな過去の実績や失敗をすり込まれるほど回顧することはまずない。
選挙戦が始まるとメディアは、すべての候補者を同じラインに立たせ、平等の扱いで報道している。
けれども、過去に公人に選ばれたことのある人物は、すでにその手法の傾向がわかっており、実際に結果も出ているのだから、善悪を問わず、常に紹介しておくべきだと思う。
人物の過去については、ウィキペディアなどで、すぐに調べられるという意見があるかもしれない。だが、残念なことにそれを実際に行っている有権者は、それほど多くない。
その結果、候補者の人気や選挙戦中の雰囲気に左右され、しっかりと検討・熟慮することなく貴重な1票を投じてしまう有権者が大半のような気がする。
もとい。新聞についてである。
新聞には、旧聞も重んじてもらい、立候補者がどんな活動をしてきたのかを毎回伝えてほしいものである。
そこで提案である。新聞は落語の『寿限無』方式で、その人物の名前の後に何をしてきた人物なのか、付け足し、付け足し、掲載したらどうだろうか?
たとえば、(今回の都知事選挙に立候補していないので)小沢一郎さんを例に挙げるなら――。
《小沢一郎衆議院議員、生活の党代表。国民の生活が第一初代代表・陸山会事件強制起訴・民主党幹事長・民主党代表・民主党代表代行・自由党初代党首・新進党党首・新生党初代代表幹事・自由民主党幹事長・国家公安委員会委員長・自治大臣は、●●をした》というイメージだ。
新生党、新進党、自由党…。「ああ、思い出した!」となること請け合いだ。
“剛腕”“破壊屋”と世間を畏怖させてきた小沢さんがどんな活動をしてきたのか、常に確認でき、覚えておくことができるだろう。
記者にとっては、手間かもしれないし、紙数がいくらあっても足りなくなるかもしれないが、芸能や生活、スポーツなど、新聞(一般紙)があえて掲載する必要のないような記事は案外多いのだから、紙面のマネジメントはできるはずだ。
『寿限無』式列挙よりも良い方法があれば、そちらを採用すればいいのだが、いずれにしても投票する前に一度でもいいから候補者の過去や素性について思い出しておきたい。
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