良品計画の捲土重来(2)

2013/10/26 00:00
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 昨日の続きです。

 

 

 不採算店舗をスクラップする

 

 そして、3つ目は国内の大型店舗だ。

 実は、リストラにおいてもっとも厄介な存在が大型店舗の閉鎖や規模縮小だった。

 撤退や縮小を決めても、多くは不動産の契約期間が残っていたからだ。もちろん、呈示される違約金をそのまま支払えば膨大な額に上る。そこで地道に撤退交渉を続け、1つ1つと閉鎖店舗を重ねていった。

 

 2000年に開業した本厚木店(神奈川県/売場面積1000坪)と2001年開業の四日市店(三重県/同500坪)は2002年に閉鎖。また2000年開業の青葉台店(神奈川県/同870坪)は2003年、440坪に規模縮小した。「採算ベースに乗るだけの需要があるかどうかを検討せずに出店を決めたことが原因だ」(松井氏)。

 

 現在、同社は、旗艦店舗と位置づける売場面積1000坪の有楽町店(東京都)を度外して、標準店舗を150坪、300坪、500坪の3つに絞り込んでいる。全社の平均は240坪。これまで標準店舗の設定商圏人口は30万~40万人だったが、現在は10万~20万人商圏への店舗開設も模索している。2006年4月21日に山梨県富士吉田市内の商業施設「キュースタ」にオープンした「無印良品 キュースタ富士吉田」は、小商圏対応フォーマットの1号店。人口5万6000人の富士吉田市に247坪の売場面積が成立するかの実験をしているところ。なお、出店のスピードは年間20店舗。2007年2月期は27店舗を計画している。

 

 企業力に磨きをかけ続ける

 

 良品計画は、こうした過去の失敗を教訓にして、さらに企業力の増強に努めている。

 

 たとえば、2006年2月期の同社の売上高販売管理費率は、33.7%と対前期比で1.7ポイントの改善が図られた。社内業務を細かく分析し不要なものをなくす。本部人員を400人から300人に削減。海外生産品を現地工場で仕分けと品揃えして配送。国内物流センターのTC(通過型)化。トラックの積載率の改善。バックヤードスペースの削減。施設メンテナンスコストの削減、など改善の内容は細かく多岐に及んでいる。

 

 また5月にシンガポールに設立した商品調達子会社のムジグローバルソーシングを通じてさらなる商品力アップとコスト削減を狙う。

 

 そして、今後の動向が注目されるのは、グループ戦略である。

 

 1996年には、フラワー事業として「花良」1号店を出店。2001年に株式会社として分離独立した花良品(東京都/阿部憲資社長)は現在、生花販売専門店を首都圏に14店舗展開する。また、2000年に「リアル店舗『無印良品』が扱わない商品を扱うこと」を主旨に設立されたのがムジ・ネット(東京都/浅田直煕社長)だ。現在は、住宅関連事業に重点を移し、パートナーの住宅メーカーと「MUJI+INFIL」の商標で住宅販売に力を入れる。スケルトン(外装)は住宅メーカーに任せ、インフィル(内装)は良品計画とムジ・ネットが担うというものだ。さらには、次期成長の種まきとして、良品計画内にカフェ・ミール事業部を立ち上げ、現在、「CAFE MUJI」5店舗、「MEAL MUJI」5店舗、「EAT IN」1店舗を展開、黒字化も果たしている。

 

 2006年8月31日には家具・インテリアの企画製造販売とカフェ・レストランを経営するイデー(東京都)を事実上買収。良品計画は、新会社ニューイデー(東京都/川ノ上信吾社長)を設立して、イデーの5店舗と従業員を譲り受けた。基幹ショップ「無印良品」との相乗効果を発揮して次期成長エンジンとしての役割が期待されるところだ。

 

 業績的には相変わらず絶好調で2007年2月期の第1四半期は2ケタの増収増益(経常利益ベース)。同期間の既存店舗は3.8%成長を遂げた(中間期は1.9%増)。

 

 流通業界の場合、“捲土重来”という言葉は成り立ちにくい。ひとたび、ダウントレンドに突入してしまうと、成長カーブとともに上昇してきた高コストを支えられなくなり、破綻するケースが多いためだ。しかし、良品計画の場合は、いま見てきたように見事に危機的状況を乗り切った。

 

 そして、良品計画がクリアしてきた問題を①不良在庫、②不採算事業、③(大型)不採算店舗と置き換えれば、どの流通企業にとって実に学ぶことの多い企業であることが分かる。
 

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