ファーストリテイリング2013年8月期決算実況中継(上)
本日から3日間のBLOGでは、恒例企画「ファーストリテイリング(山口県/柳井正社長)決算実況中継」(10月10日)をお届けする。売上高で初めて1兆円を突破。柳井社長は何を語ったのか?(談:文責・千田直哉)
2013年8月期の売上高は1兆1430億円(対前期比23.1%増)、営業利益は1329億円(同5.1%増)、当期純利益903億円(同26.1%増)の増収増益を達成した。売上高は初めて1兆円を突破した。
2013年8月期の大きなポイントは海外ユニクロ事業が業績拡大を牽引してくれたことだ。
売上高は2511億円と同64%増、営業利益は183億円で同66.8%増だった。2014年8月期は3割以上の増収を見込み、営業利益率の改善も目指している。
エリア別にトレンドを追っていくと、中華圏(中国、香港、台湾)の売上高は1250億円、営業利益135億円。既存店舗は好調で対前期比プラスで推移。店舗数は同102店舗増加した。2013年4月にグローバル旗艦店(リー・シアター店)を香港に開業。9月30日には世界最大のグローバル旗艦店の上海店を出店した。ジーユー、プラステ(PLST)、コントワー・デ・コトニエ、プリンセス タム・タムも共同出店しており、大盛況となっている。
韓国は、店舗数を25店増やし、増収増益を達成。しかしながら営業利益は計画未達だった。下期は天候不順や景気低迷によって減益を喫している。
反日感情の悪化が中国・韓国の業績に影響を及ぼさなかったとは言えない。だが、中国には再度外資を呼び込む機運があるし、韓国の反日感情が永劫に続くとは考えられない。しかも、環太平洋経済の成長、すなわち、われわれの成長は、中国と韓国を抜きにしては考えられない。だから、両国の将来については楽観視している。
東南アジアは、計画を上回る増収増益で好調を継続。6月にインドネシア1号店となるジャカルタ店をオープンするなど合計22店舗を出店して39店舗を展開するに至っている。2014年にはオーストラリア進出1号店をメルボルンに開業する。
米国は、依然赤字だが赤字額は前年と同水準。春物の販売が不振だったことと2013年秋の新店10店舗の費用がかさんだ。そして欧州は計画通りでトントンだった。
ユニクロの店舗別売上ベスト10(2013年8月期)を列挙していくと、ニューヨーク5番街店(米国)、パリオペラ店(仏国)、ニューヨークSOHO店(米国)、ニューヨーク34丁目店(米国)、上海南京西路店(中国)、サンフランシスコ店(米国)、明洞(ミョンドン)店(韓国)、銀座店(日本)、ビックロ ユニクロ新宿東口店(日本)、池袋東武店(日本)になる。実に10店舗中7店舗が海外の店舗なのである。
そして、海外店舗の重要性は年を追うごとに高まっている。
実際に店舗数を見ても、ユニクロの1299店舗のうち海外店舗は446店舗と構成比にして34%を占めるに至っている。また、ユニクロ事業の内の海外ユニクロ事業の売上構成比率は27%、営業利益は16%だ。
今後も海外ユニクロ事業はファーストリテイリングの成長エンジンと位置づけ、拡大していきたい。
われわれユニクロがこれまで実践してきたことが世界中で理解され始めたと感じている。
さて、SPA(アパレル製造小売業)でグローバル展開を初めて開始したのは、英国の「マークス&スペンサー」だ。それを英国で革新していったのが、「NEXT(ネクスト)」である。そして、米国内で大規模に事業を展開したのが「リミテッド」であり「GAP」であった。
欧州の統合をきっかけにファストファッションの「H&M」(スウェーデン)や「ザラ」(スペイン)といった欧州勢が急成長を遂げた。
その中でアジアから新しいタイプのSPA企業の登場が期待されている。ユニクロは、その企業となって世界のファッションアパレル業界に旋風を巻き起こしたい。
背景にあるのは、アジア・環太平洋地域の経済拡大であり、私はこのエリアとは「ゴールドラッシュ」の渦中にあると考えている。
われわれにとって、これは大きなビジネスチャンスであり、ユニクロもこのエリアで急拡大を遂げたいという思いがある。
世界の経済発展エリアは、欧州・米国からアジア・環太平洋に移りつつある。その先頭として経済を牽引しているのがアジアだ。アジアに居住する中産階級の人口急拡大によって、消費が爆発するのは疑う余地もない。
そのアジアにおいて、もっとも大きなビジネスに育ちつつあり、今後もさらなる成長が期待できるのが、中華圏だ。
ユニクロが1号店を出店したのは2002年のこと。当初は大変な苦労を強いられた。現在は、年間約100店舗を出店し、急成長を遂げている。
そして次の成長の舞台として期待しているのが米国市場だ。2013年8月期は、米国市場においてユニクロが新しい飛躍を遂げることができた。
西海岸、東海岸で本格的に店舗網拡大を開始している。2014年8月期は、東海岸に9店舗、西海岸に6店舗を郊外のショッピングモール内を中心に出店していく。郊外ショッピングモールでは短期間で利益が計上できる構造になっている。今後は、年間20~30店舗の出店を続け、数年内に100店舗体制を構築する。
また、米国では新しいよりカジュアルな服をつくっていかなければならない。たとえば、サイズひとつをとっても、米国のハイストリートにはスマートな体型の方が多いが、田舎の郊外だと様々な体型の方がいる。そのためにニューヨークに本格的なR&D(リサーチ・アンド・デベロップ)センターを設置する計画だ。フォーエバー21出身のラリー・マイヤーCOO(最高執行責任者)が入社したからかどうかは定かではないが、最近、米国にはとても優秀な人材が集まってきている。そこに日本のDNAを注入して、われわれの強みを生かしながら、米国流の商品を開発。最終的には世界中に売っていきたい。
欧州では、ユニクロを主要都市に出店する計画だ。
2014年8月期には5店舗の出店を予定している。まずドイツ1号店となるベルリン店。ドイツはユニクロ成長のポテンシャルの高い新しい市場として期待している。
今後は、ロンドン、パリ、モスクワ、ベルリン周辺でチェーン展開を開始する。さらには、ドイツ国内の大都市、イタリアのミラノ、スペインのバルセロナなど主要な都市への進出も計画しているところだ。
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