リラスト

2013/07/24 00:00
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 夏休み中ですが1本アップいたします。

 

 もうかれこれ20年ほど前なので時効の話だ。

 ある小売業の取引先会が開かれ、卸売企業の社長が締めの挨拶に立った。

「えー、経済状況が悪化しており、いまや企業は厳しいリラストを実行しなければいけません」。

 

 一瞬、会場に失笑が沸き起こった。会場の誰もが、〈リストラ〉と〈リラスト〉を単純に言い間違えたと考えたからだ。

 卸売業社長は続けた。

「リラストしなければならない企業は、バブル期に放漫経営してきたからであり、そのツケを払っているのであります」。

 

 こうなるともう目も当てられない。

 社長は〈リストラ〉のことを〈リラスト〉と覚えていたのだ。

 彼はその後も、4度にわたって〈リラスト〉と言い続けたけれども、側近を含め、誰も止めに入ることができず、“痛い”様をさらしながら、颯爽と降壇した。

 

 同じような話としては、大物演歌歌手の故村田英雄さんがスナックに行って、「俺のボルトを出せ!」と言ったというエピソードがあるが、これはビートたけしさんのネタのひとつだ。

 

 しかし、こちらはビジネスシーン、しかも参加者全員が注目する締めの言葉。喋っているのは、取引先会の会長兼卸売業の社長である。

 

 お気の毒というほかに適当な言葉が見当たらないが、こんなことがなぜ起こってしまうかと推測してみれば、〈リストラ〉を〈リラスト〉という誤った単語として、記憶してしまったからなのだろう。

 

 語源に戻って、「リ・ストラクチャリング」、つまり、ストラクチャリング(=構築)をし直すこと、と短縮せずに覚えていれば、あるいは言い間違えから逃れることができたかもしれない。

 

 と言ったところで後の祭りだ。

 

 この小っ恥ずかしい話から何を学べるかと言えば、記憶違いや言い間違いは、肩書きなど関係なく、誰にでも起こり得るということだ。

 

 だから、側近の方たちも含め、その時に備え、危機管理策を用意しておく必要があるということだ。
 

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