それではみなさま本当に良いお年をお迎えください

2012/12/31 00:00
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 今年もいよいよおおつごもり。あと1日を残すのみとなりました。

 BLOGの読者のみなさまには大変お世話になりました。ページビューも上がっているようですので一安心です。

 さて、年初2012年1月1日のBLOGで予想した通り、今年は「低価格」がクローズアップされた1年となりました。とくに、ナショナルブランド(NB)商品の値下げ競争が激化し、値下げ原資を確保していない中で出血大サービスをするような企業も散見でき、無為な戦いが繰り広げられました。

 この熾烈な競争は、今後もまだまだ続くものと思われます。

 同じ商品を扱った場合、差別化要因は価格しかないからです。これは行き着くところまで行くしかないのでしょう。

 その打開をねらって小売業界で起こっている動きは、SPA(製造小売業)化でした。

 独自性を発揮できるプライベートブランド(PB)を自ら開発して商品的な差別化を図っていこうというものです。高粗利・低価格を実現できるとともに差別化もできるわけです。もちろん売れなければ、在庫リスクは自社がかぶらざるをえませんから、商売自体はハイリスクハイリターンになります。

 しかし、そうだとしても、SPAという“魔法の杖”に頼らざるをえないところまで低価格の競争環境は激化しているわけです。

 いまや、GMS(総合スーパー)、食品スーパー、ホームセンター、ドラッグストア、衣料品やメガネなどの各種専門店、ネットチャネルまでがSPA化に専心しています。

 やはり最後の決め手となるのは商品ですから、SPA化の動きは、今後ますます加速して、流通各社は商品政策面で自社のカラーを前面に打ち出すようになるものと予想されます。

 そのSPA化に加えて来年以降、重要になると思われるのは、さらにサービスを拡充し、カスタマーエクスペリエンス(顧客経験価値)を上げるようなビジネスモデルを構築することだと思います。

 その良い成功ケーススタディは、日本のSPA企業の雄であるユニクロ(山口県/柳井正CEO〈最高経営責任者〉)でしょう。

 たとえば、今年3月に開業したユニクロ銀座店(東京都)は、1階から12階まで建物ファザードがすべて透明度の高いガラスで覆われた最新のデザインを導入しました。おすすめのスタイリングを紹介する巨大ウィンドウディスプレイ、LEDディスプレー、また店内にはコンシェルジュを配置して案内や提案しています。さらには6カ国に対応するスタッフを配置。キッズ&ベビーフロアには保育資格を持つスタッフを置いています。

 自社開発商品を見せる最新のディスプレー、最先端のデザイン、そして従業員のホスピタリティを組み合わせて独特の空間を創りだしているのです。

 

 リアル店舗には、ユニクロならではの楽しみがあり、買物後には、他社では味わえない満足感が残ります。そして、またユニクロに行きたくなるのです。

 

 ユニクロの強さは決してそれだけではありません。ユニクロのリアル店舗で買った商品のサイズがわかれば、こんどは試着をせずに、ネットで注文して受け取ることも可能です。テクノロジーの進歩と融合が快適なネットショッピングを可能にしており、まさに、ファーストリテイリングという社名の面目躍如です。

 ユニクロは販促面でも決して手を抜きません。デジタル会員にはクーポンを発券したり、店頭ではくじ引きのようなことをしてみたり、この年末年始には両者を組み合わせた「新春GARA-PON」なるオンラインくじを実施しています。

 さらには、大創業セールの際には、早朝の店頭に並ぶとパンと牛乳を配ったり、と泣かせるような商売をしています。

 オリジナル商品、店舗の雰囲気、スタッフの接客、味のある販促、ハイテクノロジー…。それらが渾然一体となってユニクロのビジネスモデルを創出しているのです。

 このように、これからSPA化が進めば進むほど、次に、その商品を売るための装置、販促も含めたビジネスモデルづくりが大事になると思います。

 

 そう考えてみると、2013年は、SPA化の向こう側にある競争の号砲が打ち鳴らされる年度になるような気がします。確信はありませんが…。

 それではみなさま、良いお年をお迎えください。
 

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