見事な作戦だ
9月18日、ダイエー(東京都/桑原道夫社長)の記者会見が開かれた(@大手町スカイルーム)。壇上に並んだのは、桑原社長と執行役員食品商品本部長の乾哲也氏の2人――。
今年9月23日で創業55周年を迎えるダイエーの下期政策と年末のクリスマスケーキやおせちの商品を発表するというものだ。
会見の中身については、『チェーンストアエイジ』誌にも当BLOGにも記しているので、今日はこの会見で気づいたことを1つ披露したい。
この日、2人のスピーカーはパワーポイントの画面を使って、ひとしきり話し、その後に質問時間が設けられた。記者が質問する際には、企業名と名前を明らかにすることが求められた。
記者の自己紹介を受けて、壇上の桑原社長は「今、○○さんからご質問がありました値下げに関する件ですが…」という具合に、必ず、質問者の名前をさん付けで一度確認してから、回答に入ることを繰り返した。
「名前をさんづけで確認するのは、桑原社長だけかな?」と思っていると、質問を受けた乾本部長も同じように「○○さん」と前置きしてから、答えていた。
「記者に媚びているな」という見方もあるかも知れないが、分かっていても当事者である記者の気分は悪くなるものではない。
「見事な作戦だ」と感心した。
実は、ダイエーは、現在、「お客さまの声をかたちに」ということで商品開発に力を注いでいる。
プライベートブランド(PB)の食品であれば、「おいしく食べたい!」を筆頭に2012年6月からシニア向けPBを発売開始、また青果「すこやか育ち」などの拡充も図られている。
衣料品・生活用品なら「PIECE PACE」(ピースペース)、「WINDSEL」(ウインゼル)、「Lollipop」(ロリポップ)、「Livnee」(リヴニー)に加え、2012年5月に紳士衣料「ナティス」、この9月にミセス向け婦人インナー「クリスティ」が新発売された。
つまり、お客から意見をたくさん聞き、欲しいものや既存商品の問題点をどしどし集め、新たに商品化するという戦略を進めているのである。
お客とのコミュニケーションを密にするには、話しやすい環境をつくることが必要である。そして、その環境を率先垂範、つくり出そうとする経営者の意志の表れが、記者に対する「○○さん」づけ呼びなのだと直感した。
ちなみに桑原社長就任直後の2010年9月21日に開かれた同じ記者会見では、「○○さん」づけはしていなかった。
帰り際に名刺を入れたバッジを受け付けの従業員の方に手渡しすると、「チダさん、ありがとうございました」と言われた。
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