オークワの福西さん
2008年1月、『チェーンストアエイジ』誌の編集長に就任したばかりの私は、オークワ(和歌山県)の大桑啓嗣社長(当時、現:取締役)の取材を依頼した。常務と2名で応対するという返事があった。
3月。和歌山市内の本部を訪ねた。
広い応接間に通され、大桑社長に連れられて入ってきた背の高いスリムな男性を紹介された。それが数日前に次期社長として、その名を発表されていた福西拓也(当時、常務取締役)さんだった。
「彼はオークワの実務をとても良く知っているから…」と大桑社長は、福西さんを隣に座らせると、私の矢継ぎ早な質問に次々と答えてくれた。福西さんは、ただただ頷き聞いているだけだった。
その2カ月後、福西さんは、オークワの代表取締役社長兼COO(最高執行責任者)に就任した。
編集長就任と社長就任の年が同じだったことから、それ以後、私は福西さんには、常に同期意識にも似た特別の感情を抱いていた。
福西さんも同じ感覚でいてくれたのかもしれない。取材の折や決算発表の折には、大概、歓談の場を持ちながら、最新の業界情勢について教えてもらったものだ。
1955年生まれの福西社長は今年57歳。78年にチェーンストアオークワ(現:オークワ)に入社。店長時代は、“武闘派”として社内外にその名を轟かせたという。
競合店との凄まじい価格競争では、これでもかと低価格を打ち出し、自ら「“あかんたれ”だった」と半生を振り返っていたオークワ創業者の故・大桑勇さんに「もうやめとけ」と言わしめたというエピソードを残すほどだ。
99年にSL事業部長に就任後は管理職として実績を重ねていく。2001年、SCゾーンマネージャー。02年、食品事業部ゼネラルマネージャー。そして、03年、取締役食品事業部長、05年、常務取締役営業本部長を経て、2008年にオークワ代表取締役社長兼COOに就任。大桑家以外では、初めてオークワの社長となった。
これまでの会社人生そのもの、社長就任以後の経営も非常にアグレッシブで、高質スーパー「メッサ」の業態確立、次期戦略業態「スーパーセンター」の大量出店。愛知県、岐阜県など東海エリアへの本格進出、積極的M&A(合併・買収)の実施…。また、神戸物産(兵庫県/沼田博和社長)やマツモトキヨシ(千葉県/松本清雄社長)との業務提携を実施し、企業規模と展開エリア、取扱い分野の拡大に注力。連結売上高3000億円の到達も目の前に迫っていた。
しかしながら、一昨日9月10日、福西さんは社長を退任。オークワは、後任社長兼COOに神吉康成(専務取締役営業本部長)が就任したと発表した。
退任の理由は、肺気胸の罹患によるもので、2~3か月の休養を強いられることから、福西さんが辞意を伝え、了承されたのだという。
退任に当たって、福西さんと直接話はできなかったけれども、代わりにこのBLOGで、感謝の意と早期回復への祈念を伝えたい。
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