TVCMギャップ
5年ごとに出される『国民生活時間調査報告書』(2011年2月、NHK放送文化研究所)によると、テレビ視聴の全員平均時間(テレビを見ていない人も含めた平均時間)は、平日3時間28分、土曜3時間44分、日曜4時間9分だった。
平日の視聴時間を年齢別でみると男性の10代~30代は2時間弱、40代が2時間30分、50代が3時間、60代が4時間30分、70歳以上は5時間30分という結果がでている。
女性の場合は、10代が2時間、20代~30代が2時間30分強、40代は3時間30分、50代が4時間、60代が4時間30分、70歳以上は5時間30分だ。
つまり、加齢に応じてTVの視聴時間は増えているのである。
少子高齢化が進んでいることを考えると、視聴者数、視聴時間ともにTVというメディアを支えているのは、中年~高年層と推測することができる。
ところがTVCMに目をやると、ほとんどの対象は若者だ。
たとえば「2011年のタレントCM起用社数ランキング」ベスト3(ニホンモニター社)を見ると、男性は石川遼さん、櫻井翔さん、松本潤さん。女性は大島優子さん、篠田真理子さん、前田敦子さんの順――。遼くんを除けば、「嵐」と「AKB48」であり、広告主の目は若人に向いている情勢が一目瞭然だ。
業種的には、「ネット」「ゲームソフト」「ケータイゲーム」「スマートフォン」「フリーペーパー」「クレジットカード」「デジカメ」など高齢者にとっては、意味不明と思えるような商品が増えており、主要視聴層にはチンプンカンプンということも少なくない。
デジタルテレビに付いている録画機能を駆使してTVCMを飛ばしながら視聴する若者に対して、高年層はしっかりと時系列で広告まで視聴してくれる“お得意様”のはず。ところがこの層に向けて、センスがあり、心の琴線に訴えかけるようなCMがいかに少ないことか。
そんなことを考えると、広告主の多くは、時間帯を踏まえ、視聴者とのギャップを確認したうえで、TVCM戦略を練り直すべき時期にきているような気がする。
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