登山ルートは数限りなく存在する

2012/01/23 00:00
Pocket

 大晦日。あるメンズアパレル企業の販売員Nさんは、病院を訪ねた。
とくに体調が悪いわけではなく、手には掃除セット一式。


 12月30日時点で、売場の売上実績は、予算に対して約30万円足りなかった。

 そこでNさんは、自らが店長を務める百貨店の紳士服売場に行くのではなく、病院へとクルマを走らせたのである。


 午前8時に訪問し、Nさんは黙々と病院の年末清掃にいそしんだ。

 作業を終えて時計を見れば、時刻は12時。

 今度は、病院の主であり、上客である医者とゆっくりと昼食をともにする。



「毎度すみません」と恐縮する医者に対して、Nさんは、天ぷら定食のえび天を口に運び、舌鼓を打つばかり――。2人であがりのお茶を飲み終えた頃に、「じゃあ、スーツを4点、送っておくから…」と言って医院を後にした。

 約30万円不足していた年度予算は、この売上を加えクリア。Nさんは、予算達成して無事、新年度を迎えることができた。


 もう30年も前の話なので、今の世の中に通用するかどうかは分からない。

 しかしながら、このエピソードは、登山ルートというのは、数限りなく存在するということを教えてくれる。

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態