好調の裏側には「誰」かがいる
イングランドには「FA(The Football Association=サッカー協会)カップ」という世界でもっとも歴史のあるサッカーカップ戦がある。1871年から始まり、プロやアマチュアに関係なく、FAに登録している全チームに参加資格がある。
これに範を取ったとされるのが日本の“天皇杯”だ。正式名称を天皇杯全日本サッカー選手権という。Jリーグが発足してからは、プロチームとアマチュアチームが対戦する唯一の大会となり、1996年からは高校生年代にも門戸が開かれた。
天皇杯の醍醐味は何といっても“番狂わせ”にある。圧倒的に優位と思われるチームを下位チームが倒す。判官びいきの私には何とも言えない楽しみのひとつだ。
思い起こされるのは、2003年の船橋市立船橋高校(千葉県)だ。1回戦ではザスパ草津を1-0で、2回戦では阪南大学を1-0で退けた。3回戦では、Jリーグ王者の横浜F・マリノスと対戦。接戦となり、延長戦後も2-2のスコアで勝敗は決まらず、結局、PK戦の末、敗れ去った。
さて、話はサッカーとは少し変わるが、「企業は人なり」と言われる。
その一方で、強い企業体の条件は、誰がトップにきても組織が支障なく動くことだともされている。企業運営には、あまり属人的な要素はないほうが良いということだろう。
確かにその通りなのだろう。しかし、私が企業や組織を見る上で重視しているのは、その属人的な部分だ。だから、「誰」が、そのセクションの担当者やトップになったのかは、とても気になる。強いチームには、強い理由があるはずで、リードしているのは「誰」かであるからだ。
たとえば、先述の市立船橋高校には、カレン・ロバート(現ジュビロ磐田)、増嶋竜也(現京都サンガ)、佐藤優也(現コンサドーレ札幌)、鈴木修人(現湘南ベルマーレ)など数名のJリーガーのタマゴがいた。
“番狂わせ”とみられた試合は、実は“番狂わせ”ではなかったのであり、裏側には、その時は無名だが、相当の力を備えた選手や監督がいたことを時間が証明した。
好調な企業というのも同じで、「偶然好調」ということはほとんどなく、その裏側には、必ず、「誰」かの存在があるものだ。それが「誰」なのかを明らかにしていくことが、私の仕事のひとつであると考えている。
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