3月31日、赤坂プリンスホテル閉館
長い旅が終わり、この3月31日をもって、「赤坂プリンスホテル」(東京都/現:グランドプリンスホテル赤坂:以下、赤プリ)が55年の歴史に幕を閉じる。
私と赤プリとの関係が始まるのは1983年に新館が開業してからだ。地上40階の超高層ホテルで、設計者は世界的な建築家の故丹下健三さん。
西武鉄道グループの総帥だった堤義明さんの絶頂期の作品だった。
「テニス」「スキー場」「ゴルフ場」「クリスマスイブの過ごし方」「ホテル婚」など新しいトレンドを創出し続けてきた堤義明さんと西武鉄道グループの“総本山”的存在だった。
バブル時代の私たちの憧憬のスポットであり、新館40階にあるカクテルラウンジの「トップ オブ アカサカ」では、薄給をつぎ込み、すいぶんと酔いつぶれたものだ。
いまの会社に就職してからは、日本チェーンストア協会(東京都/亀井淳会長)の賀詞交歓会の場として愛着がある。立錐の余地もないほどの混雑ぶりと混沌とした雰囲気は私にとっての年始の風物詩だった。
また、多くの記者発表や記者会見が開かれるたびに足繁く通った。
時間調整のために、3階のコーヒーハウス「ポトマック」でお茶を飲んでいると、たくさんの芸能人が行き交い、その素顔を垣間見た。
旧館(旧李王家邸)には、自由民主党の主要派閥の清和政策研究所(旧称:清和会)が事務所を構えており、国会議員の先生たちとすれ違ったものだ。
多くの流通業界の方々にとって記憶に新しいのは、日本リテイリングセンターの「政策セミナー」だろう。宴会場の「五色の間」には、年に2回、約700人に及ぶ業界のトップが集って、故渥美俊一先生から実に多くのことを教授された。
通算2500回目の記念セミナーが行われたのも「五色の間」。2010年9月6日に渥美俊一先生のお別れ会が開かれたのも「五色の間」だった。
あと3週間もすると、さまざまな思い出が残る場所が消滅する。老朽化、競合激化と時代の流れには抗えないことを認めざるを得ないが、やはり寂しい。
それまでに、もう一度、「トップ オブ アカサカ」に行って、「カクテルアカサカ」か「プリンスタワー」を頂戴しようかな。
千田直哉の続・気づきのヒント の新着記事
-
2024/09/02
魅力的な売場…抽象的な誉め言葉の意味を明確化するために必要なこととは -
2024/08/02
日本酒類販売社長が語る、2023年の酒類食品流通業界振り返り -
2024/07/03
「何にでも感激する経営者」の会社が業績が良い“意外な”理由 -
2024/06/07
経費率16%なのに?ローコスト経営企業が敗れ去るカラクリとは -
2024/05/23
キットカットをナンバーワンにしたマーケター「アイデアより大事なこと」とは -
2024/04/15
スーパーマーケット業界のゲームチェンジャー、オーケー創業者・飯田勧氏の経営哲学とは