混沌とした時代に「仮平均値」を提示し続けたい
「仮平均」とは平均値を求める時に、計算の便宜上仮にきめた値のことだ。平均値=仮平均+(各数値と仮平均との差の平均)で表される。
具体的には、たとえば、(10・30・60・55・40)というような任意の数字5つからなる集合Xがあるとき、これを累計してから5で除するというのは非常に手間がかかる。そこでカンに頼って、この数字の平均値(=仮平均)をあらかじめ予測するのだ。
いま、その予想値を40と設定してみよう。次にこの予測値と集合Xの各数値の差を求める。
そうすると、(-30・-10・20・15・0)という集合Yができる。仮平均とは、この集合Yの数字の累計を5で除した数字に、さっきの予測値40を加えると、集合Xの平均値が算出できるというものである。ちなみに答えは39。
「かえって面倒くさくなったじゃないか」と言わないでほしい。数字のサンプル数が多い場合は意外と役に立つものだ。
なぜ、唐突にこんな話をしているのかと言えば、さきほど、カンに頼って予測した仮平均値の40についてだ。
時代が混とんとするなかで、どうも言葉も混とんとしているようで、流通業界でもあいまいな言葉が飛び交っている。
ディスカウントストアなどというのは、その最たる例だ。
それぞれの企業が、それぞれの政策にしたがってディスカウントストアの開発に専心する。そのこと自体はとくに問題ないが、いまやディスカウントストアという言葉自体が1人歩きを始めてしまい、業界の共通の言葉や定義は非常に曖昧模糊としている。A社のディスカウントストアとB社のディスカウントストアは違うことが多々ある。
実は、この現状こそ、さきほどの混とんの集合Xなのである。
そこで必要になってくるのが40という仮平均だ。この数字はもちろん正解ではない。しかし何かの指針にはなるはずだ。
そんな仮平均値の精度を高めながら、『チェーンストアエイジ』誌は、よりよい情報を提供し続けたい。
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