ボールの後追いをしていませんか?
遊興としてのサッカーのゲームでよくある光景は、1つのボールに大勢の人間が集中することである。広大なサッカーグランドのゴール前には暇そうな2人のキーパー。それにボールを中心にした人の塊があるだけで、逆サイドは全くのガラ空き、ちょっと腕に覚えのあるプレイヤーが1人、2人いればハットトリックなんて難なく決められるだろう。
サッカーでは笑って許されるボールの後追いだが、流通業界でも同じようなことが起こっているとなるとちょっと厄介だ。
たとえば、店舗大型化というボールだ。2000年の大規模店舗立地法施行以降、“大型店舗”という名のボールの後追いをした企業はいまになって後悔しているのではないだろうか?
改正薬事法施行にともなうドラッグ事業参入というボールもある。ビジネスの将来をしっかりと考える経営者であれば、2009年6月の改正前に1縲・年をかけて対策を練り、改正直後には、一気に新しいビジネスモデルのアクセルを踏み込んだろう。しかし、後追いの場合は、改正後の各社の動きを見てから対策を考えるから、周回遅れは当たり前。事業を開始したときには、魚群は去っていたなどということでは笑い話にもならない。
しかし、そんな現実は枚挙にいとまがないほど多い。
先日、お会いした東日本旅客鉄道(JR東日本)の新井良亮副社長は、「市場トレンドから遅れてボールの後追いを始めてしまうとどうにもならなくなってしまう。ビジネスでは、ボールの先行きを読んで、パスを出し、シュートを打ち続けることが大事だ」と話していた。だから、店舗を変革する速度をスピードアップさせるのだという。
この4月、JR東日本は紀ノ國屋(東京都/菅野研也社長)を傘下に収めた。創業100年の老舗スーパーを使って、どんなゴールを見せてくれるのか、とても楽しみにしている。
(『チェーンストアエイジ』誌2010年5月1日号では新井良亮東日本旅客鉄道代表取締役副社長事業創造本部長のインタビューを掲載します)
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