都市型小型食品スーパーが流行する3つの理由

2010/07/07 00:00
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 近年、都市型小型食品スーパー(SM)店舗の開発に取り組む小売企業が増えてきた。イオン(千葉県/岡田元也社長)グループのまいばすけっと、アコレ、マックスバリュエクスプレス。テスコ・ジャパン(東京都/マイケル・フレミング社長)のテスコエクスプレス、マルエツ(東京都/高橋惠一社長)のマルエツプチ、ポロロッカ、フーデックスプレス。いなげや(東京都/遠藤正敏社長)のina(イーナ)21。ボックスストアのビッグ・エー(東京都/上?正典社長)、サンディ(大阪府/平井晃社長)など数え上げれば枚挙にいとまがない。

 この潮流の理由は大きく3つほど考えられる。

 

 ひとつには、2007年に施行された改正まちづくり3法の影響である。

 延べ床面積1万?以上の店舗が出しにくくなる中で、小売業の出店は方向転換を余儀なくされている。

 さかのぼる00年に施行された大規模店舗立地法の下で、小売業各社は郊外を中心にほぼフリーハンドに近い形で出店することができるようになった。その結果、郊外店舗はほとんどのフォーマットが飽和状態になってしまった。半面では、駅前などの中心市街地の商業施設は空洞化に向かっていった。

 一方、この流れに目もくれずに、首都圏で地歩固めをしてきたオオゼキ(東京都/石原坂寿美江社長)やオーケー(東京都/飯田勧社長)などは、好調をキープしており、首都圏は、多くの企業にとって、「おいしい市場」に映り始めたのだ。

 ところが、都心立地では自社の標準店舗の間尺に合った土地や物件を見つけだすのは至難の業。採算ベースに乗せることはさらに難しい。

 そこで、小型店を出店しようという目論見だ。

 

 2つには、消費者需要の変化への対応である。

 内閣府が発表した「高齢社会白書」によれば、日本における65歳以上の人口構成利率高齢化率は23%(2010年)という超高齢化社会である。今後、高齢者はクルマを運転して、巨大な商業施設に頻繁には行けなくなる。もしくは行くことが苦痛になっている。

 また、以前、『チェーンストアエイジ』誌が行った調査によれば、SMを選ぶ理由は「近い」ことが第1位で79.4%。第2位の「品揃え」(49.8%)に大きく水を空けている。つまり、高齢者だけでなく、消費者は生活必需品を購入する際には、郊外の大型商業施設よりも身近に存在する店舗でのショッピングを志向しているのである。

 現在、この消費者ニーズへの対応にもっとも積極的なのはコンビニエンスストア(CVS)である。近年は、若者需要依存一辺倒から脱し、「和食」「ロー・カロリー」「小分け」「刺身」などの新しい商品を導入することで都市部の需要獲得に努めている。

 そして、CVSの独走に待ったをかけるべく、都市型小型SM店舗を出店しようという目論見だ。

 

 3つめは、米国の小型店舗ブームの影響である。

 日本以上に厳しい経済環境の米国において、現在、元気の良い小売業は、ウォルマートのスーパーセンターとノーフリルで超低価格の小型SMである。

 小型SMの代表格であるアルディの平均売場面積は約930?。1400SKUを品揃え、その約95%がPB(プライベートブランド)という店舗だ。現在、カンザス州から東海岸までのエリアを中心に、29州で1000店舗近くを展開しており、09年度には、マンハッタンへの初出店を含む、75店舗を出店した。

 アルディのような、絞り込んだ品揃えでショートタイムショッピングを売りにする小型SMは米国では増加の一途を辿っている。

 トレーダー・ジョーズなどの先駆的存在があるので、小型SMのコンセプト自体は新しいものではない。

 現在の小型SMブームの特徴は、テスコの「フレッシュ&イージー・ネイバーフッド・マーケット」、ウォルマートの「マーケットサイド」、セーフウェイの「ザ・マーケット」、ジュエル竏茶Iスコの「アーバン・フレッシュ・バイ・ジュエル」、ジャイアント・イーグルの「ジャイアント・イーグル・エキスプレス」といったように既存の企業が新フォーマットとして出店していることだ。

 このブームに学ぶ日本のSM企業は少なくない。

 

 小型SMのメリットは、一見、多くありそうにみえる。

 しかしながら、こうした動きを疑問視するSM企業のトップもいる。

 「小型店舗は初期投資額は小さいかも知れないが、販売管理費を押し上げるきらいがあるのでPBやSB(ストアブランド)を拡充して粗利益率を上げる必要がある。まして都市部に出店すれば、損益分岐点は高くなり、黒字化するのは難しい。しかも、労働集約的なオペレーションを取らざるをえなくなるのでチェーン化はなかなかできないだろう」。

 

 都市型小型SMは、確かに日本の人口動態上も志向の変化にもマッチするフォーマットであることは間違いないところだ。「飽和状態にあるカテゴリーの新しい販売方法」なのかもしれない。

 しかしながら、中長期戦略を持たない中での安易な参入は、大怪我につながりかねないと自戒する必要はある。

 

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