いまこそ45歳のジョージ・フォアマンに学ぶ(前編)

2010/05/07 00:00
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 沢木耕太郎さんの映像ノンフィクションに『奪還』という作品がある。

 

 1994年11月5日、45歳の元世界ヘビー級王者、ジョージ・フォアマンが、劇的な逆転KO勝ちで20年ぶりに世界ヘビー級チャンピオンの座に返り咲く――。

 『奪還』は、“キンシャサの奇蹟”と呼ばれる試合でモハメド・アリに敗れたジヨージ・フォアマンが再び王者の座を奪還するまでの「魂の軌跡」の物語だ。

 45歳にしてなぜ、何のためにタイトル奪還に挑んだのかを、沢木さんは丁寧な取材を繰り返しながらレポートしている。

 

 ジョージ・フォアマンは、メキシコシティオリンピックのボクシングヘビー級で金メダルを獲得することで世界中にその名を知らしめた。

 実際にその強さは群を抜いており、プロに転向してからもジョー・フレージャーやケン・ノートンといった一流チャンピオンにKO勝ちし、統一世界ヘビー級王座を獲得、防衛した。

 

 1974年、ザイールのキンシャサで対戦したのは全盛期を過ぎたモハメド・アリ。

 誰もがジョージ・フォアマンの勝利を確信していたにもかかわらず、なんと、モハメド・アリのクレバーな戦術の前に敗れてしまう。

 

 ジョージ・フォアマンは、その後、チャンピオンベルトを再び手にすることなく、1977年に28歳で引退する。

 しかし、牧師でもある彼は、青少年の更生施設の建設費用捻出のためリングに復帰することになる。

 いく度かの挑戦を経て、45歳でマイケル・モーラーの持つWBA・IBF世界ヘビー級王座に挑戦し、10ラウンドにKOで勝利。最年長世界ヘビー級王者となったのだ。

 

 沢木さんのルポルタージュは、このマイケル・モーラー戦を控えたジョージ・フォアマンの姿を取材したものだ。

 沢木さんは、スパーリングや家族との団らんの場、牧師としての説教の場など大抵の取材は許される。

 

 だが、ジム内に一か所だけ出入り禁止のゾーンがあった。

 「何をしているのだろう」と沢木さんは不思議に感じ、どうしても見たいという衝動に駆られる。

 

 そして、その強い思いはついに現実になる。鏡の角度の加減から、偶然、ゾーン内の様子を目の当たりにしてしまうのだ。

 

 さて、鏡の向こうのジョージ・フォアマンは何をしていたのか?

 

 

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