流通業にはいい人材が集まらない、のは何でだろう?
ある企業からヘッドハンティングの話を持ちかけられた某社の幹部は言う。
「『流通業界は人材は豊富だが、いい人材は少ない』と(話の仲介役だった)人材紹介会社に言われました。確かにそうかもしれません」。
流通業界の各社は良い人材の確保に血眼になっているけれども、新卒・中途採用ともに他の業界に買い負けているような状態が続いている。
なぜ、流通業界には良い人材が集まりにくいのだろうか?
ひとつの大きな理由は、年収の低さである。
企業によってはメガバンクや総合商社の2分の1、3分の1、4分の1というケースもあるほどだ。
では、なぜ、年収が低いのかと言えば、原因は収益性の低さにある。
とくに最近目に余るのは、値下げ原資の裏付けのない中での安売りである。同業他社に合わせる格好でただただ出血大サービスの値下げをしており、自らの手で収益性を悪化させているのである。
「仕事の目的はカネだけではない。流通革命のロマンを夢見て人が集まる」という考え方もわからないわけではない。
だが、ユニクロやニトリなどには、断りきれないほどの膨大なエントリーがあることを考えれば、ロマンはもちろん、加えて収益性と高収入を兼ね備えることが必要だ。
もうひとつ。流通業の中で比較的人気が高いのは、売上高の大きな企業だ。いつの時代も「寄らば大樹の陰」を志向する就職希望者はいるものだからだ。
そう考えると、流通業界を十把ひとからげ的にとらえ、「流通業には良い人材が集まらない」と決めつけてしまうのはおかしいということが分かる。
大規模ではなく、ロマンがなく、収益性が低く、年収が低い流通企業には、良い人材が集まらないということだ。
ということは、こうした企業が何百社と集まって、「流通業界に良い人材を」といったイメージアップキャンペーンをはっても、成功する可能性は低い。
まずは、自社がロマンを掲げ、高い収益性と年収を確保できるように強いビジネスモデルを構築するのが先決だろう。
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