身近にこんな若者がいるなんて…
コートに入ってきた時には、「なんて格好してるんだ! このガキは…」というほどにダブダブのヒップホップ系の出で立ちだった。
ところが上着を脱ぎ、テニスコートに立つと、好青年に大変身――。
ミックスダブルスでペアを組む母親とともに会場中をほのぼのとした雰囲気に変えた。
大学生の荻田クンは、テニスを始めてまだ2年足らず。A>B>C>D>Eと5段階ある「D」レベルだった昨秋、シングルスの試合に初出場して「A」クラスや「B」クラスの猛者を相手に初優勝。テニススクール中の話題をさらった。
今回の試合前も、テニススクールのヘッドコーチは「荻田クンは本当に凄い。ダブルスならお母さんは、コートに立って何もしなくても優勝するだろう」と絶賛だった。
荻田クンのプレースタイルは、女性に対してきつい球を打たないことだ。
もちろん打球の先が腕に自信のある男性プレイヤーならば、容赦はしない。
しかし女性に対しては、サーブは4割ほどの力、ストロークやボレーは5割くらいの力しか入れていないように見える。
誰もが試合に勝ちたいと考えるのは当たり前のことだから、接戦になり、追い込まれれば、プレースタイルを変えるだろうと踏んでいた。
ところが、彼は同じスタイルを終始一貫通した。
そんな形だから、ピンチにもさらされる。母親がイージーミスをすることもある。
でも、荻田クンは、怒ることもなく、コート内で母親に軽口を叩いて笑わせながら、楽しそうに次のプレーを始める。
なんてジェントルマンなんだ!
たぶん、力量が3回り、4回りと違わなければ、こんなプレーはできない。
それほど、参加選手の中では飛びぬけた存在感と強さを見せていた。
ギャラリーの視線も自然と荻田クン親子に集中し、試合中も試合後もテニススクールは荻田クンの話題で持ちきりだった。
残念なことに、荻田親子は決勝で敗れてしまったけれども、負けてなお強し。優勝者がかすんでしまうほどに、格好いい姿を見せてもらった。
身近なところに、こんな若者がいるとはまだまだ日本も安心だ。
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