視野を拡げることがシェアを拡げる
「百貨店のライバルは百貨店」と言い切り、他業態には目もくれなかった百貨店のトップを何人も知っている。
“プライド”“矜持”と言えば格好はいいが、そうこうしているうちに百貨店業界は、衣料品専門店、ホームセンター(HC)、アウトレットセンター、インターネットなど多くの新勢力からの攻撃を受け、厳しい経営環境に置かれてしまった。
GMS(総合スーパー)企業を訪れると、同じようにGMSの同業他社動向を意識する傾向が依然残っている。
だが、周知の通り、GMSから売上を奪っているのはGMSではない。むしろ、新しい起業家が虎視眈々とGMS同士の拮抗の間隙をついてシェア獲得を狙っている。
フィリップ・コトラー流に言えば、同じ業界内で高いシェアを持つ企業は、自分で業界の定義をあえて変えて、シェアを低くしてみる必要がある。
一例を示してみよう。
HC業界のリーディングカンパニーであるDCM Japanホールディングス(東京都/久田宗弘社長)の2008年度売上高は4265億5000万円。HC業界の市場規模が3兆6425億円なのでシェアは11.7%になる(『ダイヤモンド ホームセンター』誌調べ)。
しかし、HC市場をもっと大きくとらえ、取扱部門であるリフォーム市場の約6兆円や農業資材市場の約2兆6000億円、ペット関連市場の約1兆円などの数字を加算すれば、そのシェアは1桁前半に下がってしまう。
欧米やアジアを含めたグローバルレベルでの住関連市場をHC市場ととらえれば、点にも満たない規模なのではないだろうか?
だからと言って卑下することなどはまったくない。
どんなに限定された分野であっても、大きな存在感があることはむしろ誇りなのであるが、シェア上位企業と言っても、まだまだ伸びる余地があるということは自戒したい。
視野を拡げることがひいては自社のシェアを拡げる第一歩になるからだ。
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