下がった物価をまた上げるの?

2011/08/10 06:44
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 「2010年までに日本の物価を2分の1にする」。

 

 ダイエー創業者の故・中内功さんと日本リテイリングセンターの故・渥美俊一さんは、“価格破壊”を誓い、共闘するような形で国際水準との比較で高かった物価引き下げに努めた。

 

 実際、ダイエーは、中内さんの指揮のもと、プライベートブランドの「セービング・バレンシア・オレンジジュース」(1?、198円)やベルギーから輸入した「バーゲンブロー」ビール(330ml、128円)などを次々と開発販売し、2分の1までは届かないまでも、物価は徐々にではあるが下がっていった。

 

 その後、デフレなどの影響もあり、日本の物価はさらに下落した。

 

 加えて、大創産業(広島県/矢野博丈社長)、ニトリ(北海道/似鳥昭雄社長)、カインズ(群馬県/土屋裕雅社長)、西松屋チェーン(兵庫県/大村禎史社長)、ユニクロ(山口県/柳井正社長)、大黒天物産(岡山県/大賀昭司社長)、神戸物産(兵庫県/沼田昭二社長)など、2人の“革命家”に少なからず影響を受けた新興企業の台頭と躍進で日本の物価は確実に下がっている。

 カテゴリーによっては、「物価2分の1」を達成できたと言っていいかもしれない。

 

 その一方で、かまびすしくなってきたのは消費税増税議論だ。

 

 国債と借入金、政府短期証券を合わせた国の債務残高は、過去最大を更新する約998兆円と1000兆円台に達しつつある。東日本大震災の復興やB型肝炎の和解金支払いなどの財源確保のために消費税増税は検討されており、10%という具体的な数字も見え隠れする。

 

 国の運営面だけを考慮すれば、「消費税増税やむなし」となることは分からなくはない。

 

 しかし、流通業が企業努力を繰り返すことで引き下げた売価を、日本政府が消費税増税という政策で再び引き上げる、という構図では、“革命家”たちの努力は報われないし、彼らの成果を横取りされたようで納得できない。

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