田沢湖マラソン顛末記

2010/09/22 06:44
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 田沢湖は秋田県仙北市にある湖で水深423.4メートルと日本では最深。あの東京タワーさえ、すっぽり湖底に沈んでしまうほどだ。

 

 周囲の長さは、ちょうど20キロメートル。フルマラソンの約半分の距離なので、この自然のコースを利用してマラソンをしてしまおうというのが「田沢湖マラソン」である。

 その第25回大会に参加、スタートの号砲は9月19日(日)10時に鳴った。

 

 以前にこのブログで書いたとおり、酷暑だった7月から9月にかけて、練習量は十分で、気合いを入れてのエントリーと出走になった。

 

 スタート直後から、早速、練習の成果が出たような気がした。

 初めの10キロメートルの足取りが軽いような感じだったからだ。なかなかのハイペースで田沢湖の女神であり、10キロメートルの道標でもある「辰子姫像」までは簡単にたどり着いた。

 

 ところがそこから先がまったくいけなかった。

 12キロ地点では、スキーのゲレンデのような坂が突如、前面に広がる。

 摂氏18度と気温はそんなに高くはないのだが、汗はだらだらでシューズ内はグチョグチョの状態。しかも、たぶん自分の力量を上回っていた10キロまでのオーバーペースが災いして足がついていかない。

 

 峻険でタフなコースを前に「歩いちゃいかん」と何度も自分に語りかけたけれども、その誘惑に勝てず、歩き始めたとたんに、手を振っても、歯を食いしばっても足が上がらなくなってしまった。気づけば、後ろにいたはずの仲間たちが必死の形相で1人、2人と私のことを抜いていく。『水戸黄門』の歌詞通りの光景だ。

 

 さすがに下りは、勾配を利用して、バタバタと落ちるように走ったが、それ以外は平坦な道も上り道もすべて歩くという情けないレースとなってしまった。

 

 ジョギングを始めて約30年、マラソン大会に出場し始めて約15年。実父の出身地であるこの地で、ランナー人生最悪の試練を味わうことになろうとは予想だにしていなかった。

 走りながら泣きだしたくなったのは初めてだ。

 

 猛練習をしたからと言って、いい成績を残せるとは限らないのがスポーツの掟だ。

 結局、完走までに費やしたのは2時間16分――。これでマラソンは2大会連続での不本意な結果に終わった。

 

 また降り出しそうな曇り空を仰ぎながら、次の大会でのリベンジをわが胸に誓った。

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