人事制度は「10年に1人、社長をつくりだす仕組み」と習ったものだが・・・
4年ほどお世話になった企業で“同期の桜”だったT君から「部長になった」と連絡をもらった。早速、お祝い会を開いて話を聞くと、同じ人事異動で同期のK君は執行役員になったことを知った。
そういう年代になったのかと感慨にふけるとともに、企業の人事とは何なのかと考えてしまった。
東レ経営研究所(東京都/三本木伸一社長)元社長の佐々木常夫さんによれば、大体35歳までに同期入社の出世レースの雌雄は決しているということだ。
その時点で、肩書き的な格差はなくても、人事部の閻魔帳には、大きく記されており、まず逆転不可能。本当に時々、地味にコツコツ仕事を積み重ねた人が、“遅咲きの大輪”として40代以降に、現れる例外があるくらいだという。
佐々木さんの言うように、確かに、幹部候補生の素材選別レースは、35歳くらいまでに決しているのだろう。
だが、その先、すなわち多くの同期の中でふるいにかけられた数%の逸材の中から、役員や社長はどのように決められるのだろうか?
建前なら、業績考課などの人事制度はそのためにあると言ってしまっていいだろう。
実際、人事制度とは「10年に1人の社長をつくりだす仕組み」と習ったものだ。
しかしながら、そんな企業はほとんどない。
そんなことを、T君に尋ねてみると、「運によるところが大きい」と話してくれた。「ゴール前に偶然立っていたら、そこにクロスボールが入ってきてシュートに成功したようなもんだよ。部長職や執行役員職にたまたま空きができた時に、自分たちが最適の位置にいたんだから」。また、「優秀な上司に付き、覚えが良かったことも大きかった」と振り返った。
まあ、会社というのは本当に不公平な場所だ。
偶然の空席や選ぶことのできない上司の浮沈が自分の命運にかかわってくる。さらに言うなら「好き嫌い」で人事が決まってしまうことも少なくないものだからだ。
しかし、嘆いてばかりいても埒は開かない。もし、出世したいのであれば、まずは35歳までの幹部候補者の素材選別レースで勝ち残る努力をしなければいけない。
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