串カツ田中 全席禁煙、先んずれば競合を制す
串カツ田中 全席禁煙、先んずれば競合を制す
2018年6月1日から、ほぼ全店で全席禁煙化に踏み切ったのは、串カツ田中ホールディングス(東京都/貫【ぬき】敬二社長)だ。
国内180店舗で「全席禁煙」を導入したのは、約92%に当たる180店舗。その他、「フロア分煙」が12店舗、「喫煙可」としたのは「立ち呑み業態」の3店舗という状況だ。
同社は、もともと家族客を重視してきた。
「外食産業は消長が激しいものであるが、ブームには振り回されず、長期間にわたって支持される企業を志向してきた。たとえば『串カツの田中』業態が出来たのが10年前。その頃、10歳だった子供は青年になり、自分で稼いだおカネでわが社の懐かしいジャンクフードを食べにきてくれるというのが理想」(貫社長)。
「どうせ(全席禁煙を)やるなら一番で導入したかった」と振り返るのは貫社長だ。
この言葉には伏線がある。同社は「プレミアムフライデー」の前倒し、“フライングフライデー”で大成功を収めていたからだ。
ご存知、「プレミアムフライデー」は、経済産業省や経済団体連合会、経済界が推奨する個人消費喚起や働き方改革の取り組み。毎月末の金曜日には15時に仕事を終え、買物や飲食や旅行などの時間に当てようというキャンペーンで第1回めは2017年2月24日(金)だった。
これに先立つ1月27日(金)に、同社は「一足お先にプレミアムフライデー “フライングフライデー”」と称して、串カツ全品100円や全店15時オープン、メガサイズの串カツ豚100円などの販売促進策を打った。
メディアはこぞって、同社を取り上げた。
本家の「プレミアムフライデー」が鳴かず飛ばずの中にあっても、1人勝ちすることができ、現在も続いている。
「一番先だったからよかった」と貫社長は言い、今回は「多数の人が集まる建物内を罰則付きで原則禁煙」とする改正健康増進法が段階的に施行される2019年~2020年に向け、先手を打った格好だ。
すでにこの6月の結果は出ており、既存店舗の客数は対前期比2.2%増。しかし、家族⇒アルコール販売減少を受け、客単価は同5.0%減、売上高は同2.9%減となった。
客層は確実に変化している。
増えているのは、同社がメーン顧客に据える「家族」で同6%増、「一般男女グループ(~20代)」は同1%増、「女性・カップル」は同1%増というところ。減っているのは、「会社員・男性グループ」で同6%減、「一般男女グループ(30代~)」は同1%減という具合だ。
「喫煙されるお客さまは敬遠されるが、それは織り込み済み。今の若者はタバコをほとんど吸わない。しかも、これだけ大々的に発表しているのだから、知らないうちにお客さまが減るのではなく、ちゃんと原因が明らかになるので対策も打ちやすい」(貫社長)。
貫社長は、中長期で安定成長できる飲食店づくりを何より重視している。
「しっかりとデータ収集して分析することで手を打ちたい。タバコを2時間我慢しても行きたいと思われる店づくりに集中し、『禁煙だから行こう!』と言ってくださるお客さまにお越しいただきたい」と抱負を語っている。
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