深刻化する「カスハラ」の問題 従業員を本当に守るために必要なこととは
実態調査を起点にカスハラに対処する文化を醸成
アンケートでは、加害者の属性や言動といった一般的な設問に加えて、自由記述欄を設け、従業員がどのように感じたかを深掘りしている。定義づけにおいて「心が傷ついたかどうか」といった従業員の主観的な要素を重視するのは、守るべき対象は従業員であるという原点に立ち返るためだ。

実態調査の結果に加え、客観的な定量データと同社の経験則を踏まえながら、企業ごとに適したカスハラの定義を導き出す。この共通認識こそが、マニュアル策定や研修といった実践的な対策の土台となる。
なお、吉田氏によれば、カスハラの加害主体には業種や業態による一定の傾向はあるものの、BtoBかBtoCかによる大きな違いはないという。多くの場合、端末操作やサービスへの不満がきっかけとなり、やがて「お前の態度が悪い」といった感情的な攻撃に発展することが多い。
このような実態を踏まえ、前述の調査によると、カスハラは従業員のストレスや転職意向を高めるだけでなく、組織全体のパフォーマンスにも悪影響をおよぼす。吉田氏は、「従業員が対応できないカスハラ案件は上司が引き取り、上司も疲弊し、結果として組織全体の生産性も低下する」と、現場の実態を説明する。
こうした課題に対応するため、パーソルビジネスプロセスデザインは、「カスハラに強い組織づくり」をめざして、組織文化の見直し、研修体制の整備、相談ネットワークの構築に取り組んでいる。
研修は対面とオンデマンドの両方を活用し、社会動向やカスハラの基本知識、対応時の注意点などを、実践的に学べるよう構成されている。加えて、事例を交えながら「複数人対応の原則」などの対処法や、冷静な心構えを養う内容も含まれている。

カスハラは、暴言や脅迫にとどまらず、土下座の強要や身体的攻撃におよぶこともある。実態調査を通じて、従業員が日常的に受けている過激な暴言や脅迫の実態を初めて知った管理職が、対処の必要性を強く認識するケースもある。こうした実態把握により、被害者がつらさを吐露できることで心理的負担が軽減されると同時に、カスハラに対処するための組織文化の醸成にもつながる。
今後、パーソルビジネスプロセスデザインは支援人材の拡充とともに、現場のニーズに応えるリアルタイム支援の強化も視野に入れている。吉田氏は、カスハラ加害が生まれる背景にも目を向け、「心理的に余裕を持てる人が増えれば、暴言や暴行といった行為も減るのではないか。目の前の人を加害者にしないためにも、その人が幸せを感じられるよう支援したい」と抱負を語った。






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