深刻化する「カスハラ」の問題 従業員を本当に守るために必要なこととは

構成:編集プロダクション雨輝
取材:阿波 岳 (ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者)

近年、カスタマーハラスメント(カスハラ)の深刻化が問題となっている。とりわけ顧客との直接的な接点の多い飲食業界や小売業界では、心身の不調をきたす従業員も少なくなく、離職につながるケースも多い。企業側にとっても、人材確保の観点で無視できない問題だ。こうした課題に対し、生成AIやデータ活用を通じて業務・マーケティングの変革を支援するパーソルビジネスプロセスデザイン(東京都/市村和幸社長)は、カスハラを社会課題のひとつと捉え、包括的な対策・支援サービスを展開している。本記事では、サポートサービス業界で25年にわたり延べ5万人以上の顧客対応を経験してきた、パーソルビジネスプロセスデザインの吉田純一郎氏に、カスハラの現状と同社による支援の取り組みについて話を聞いた。

カスハラ
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方針策定から研修、被害者ケアまで
一気通貫で支援するカスハラ対策

 人材サービス大手のパーソルグループ傘下のパーソルビジネスプロセスデザインは、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)およびヘルスケア領域で培った知見を生かし、カスハラ対策に関する総合支援サービスを提供している。

 このサービスでは、以下の6項目を一貫して支援している。

  1. 基本方針の策定
  2. マニュアルの作成
  3. 相談窓口の設置
  4. 被害者ケア
  5. 教育研修
  6. 事例の蓄積

 企業が初期対応から継続的な対策まで、組織的に取り組めるよう支援する点が特長だ。中でも相談窓口の整備では、顧客向けだけでなく、従業員専用の窓口を新たに設ける企業が増加しているという。

 また、カスハラの被害者ケアにおいては、公認心理師などの専門家がアバターを介してオンラインでカウンセリングを行う「KATAruru(カタルル)」というサービスを提供。相談者の心理的なハードルを下げ、継続的なケアを可能にしている。

 パーソルビジネスプロセスデザイン ワークスデザイン事業本部 サービスデザイン統括部サービス戦略部部長の吉田純一郎氏は、サポートサービス業界で25年にわたり、延べ5万人以上の顧客対応を経験してきた。

 吉田氏は、「長年、カスタマーサービスの現場には暴言や脅迫があった。しかし近年、それらがカスハラとして社会的に認識されるようになり、ようやく課題が顕在化してきた」と語る。

パーソルビジネスプロセスデザイン ワークスデザイン事業本部 サービスデザイン統括部 サービス戦略部 部長の吉田純一郎氏

 こうした総合支援サービス展開の背景には、深刻化するカスハラの実態がある。パーソル総合研究所(東京都/岩田亮社長)が246月に発表した「カスタマーハラスメントに関する定量調査」によれば、サービス業従事者のうち、カスハラの被害を経験した人は35.5%に上る。とくに直近3年以内の被害経験者は20.8%と高く、増加傾向が見られる。業種別では、福祉系職種が34.5%と最も高く、次いで卸売・小売(27.8%)、飲食(24.2%)と、いずれも高い割合となっている。

カスハラの被害経験に関する調査結果(「カスタマーハラスメントに関する定量調査」)
カスハラ被害の経験率(職種別)の調査結果(「カスタマーハラスメントに関する定量調査」)

 同社は、「あらゆる仕事と組織を革新し、よりよい働く環境があふれる社会をつくる」という企業理念のもと、カスハラ問題の解決にも積極的に取り組んでいる。

 カスハラ対策の第一歩として、パーソルビジネスプロセスデザインは個社ごとの定義づけを重視する。業種や雇用形態の多様化により、厚生労働省が示す一律の定義では現場に馴染まないためだ。そこでまず、従業員アンケートによって実態を把握することから取り組みを始めている。

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取材

阿波 岳 / ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者

大学卒業後、社会の荒波にもまれる日々を経験。そこで書籍や会報誌の編集に携わるうちに、メディア事業への興味が芽生え、今に至る。
趣味は喫茶店巡りと散歩。喫茶店での一杯のコーヒーや、街角の散策を生きがいとしている。
これまで全都道府県を制覇するという小さな目標を達成した。何かを極めたり、制覇したりすることには、なぜか人一倍の熱意を注いでいる。
最近の悩みは、ここ数年で増えた体重との戦い。健康の大切さを意識しつつも、喫茶店のコーヒーに合わせたスイーツや、ランチの大盛りがやめられない。今日もまた元気に「大盛で!」と注文しつつ、明日こそ控えめにしようと心に誓っている。

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