アングル:MMT理論、5つの疑問点

ロイター
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MMT理論
8月7日、米国を中心に話題となっている現代貨幣理論(MMT)について、5つの質問に対する答えをまとめた。写真はニューヨークの街並み。6月21日撮影(2019年 ロイター/Mike Segar)

[ワシントン 7日 ロイター] – 米国を中心に話題となっている現代貨幣理論(MMT)について、5つの質問に対する答えをまとめた

主な考え方は

高名な経済学者のジョン・メイナード・ケインズと同様、MMTの提唱者らは、就労を望む人すべてが職を得るのに必要な需要が不足している時、政府が需要不足を補う上で重要な役割を担えると考えている。

経済学者ハイマン・ミンスキーの考え方も参照している。ミンスキーは金融バブルに関する仕事が最も有名だが、市場システムには完全雇用を達成できない傾向が本来備わっているとの考え方も示している。

MMT提唱者らは、ケインズと同時代の学者アバ・ラーナーの著作からも、貨幣需要に関する独自の見解を導き出している。MMTの考え方では、政府だけが発行し、かつ政府が財およびサービスに支出できる通貨で納税するよう国民に強制できる政府の権限が、貨幣需要の根幹を成す。つまり政府支出は、全景気サイクルを通じて需要を安定させる全国民への雇用を保証するプログラムなど、中核的な政策に利用できるというのがMMTの見解だ。

インフレを招かないのか

MMT提唱者らの考えでは、自国通貨を持つ政府には「予算制約」がない。言い換えれば、いつでも通貨を発行できるので資金が不足することはない。MMT理論では財政政策を経済安定化の主要な道具とみなしており、選挙で選ばれて政府の要職に就いた人々が雇用の保証などの目的達成に必要な支出決定を行うことに信頼を置く。

それではインフレを招くからこそ過剰な支出を監視する独立した中央銀行が必要なのだ、との指摘もある。MMT提唱者もインフレのリスクは承知しており、そのリスクが制約となって政治家に誠実な行動をとらせると考えている。MMTの枠組みでは、インフレは実物資源の限界の産物であり、インフレを抑制するために支出、税制、各産業の規制政策を決めるのは議会の役割だと見なされている。

雇用はどうなる

MMT提唱者は労働力を主な資源と見なしている。中心的な考え方は、労働力の過少利用が米経済の慢性的な問題であり、米連邦準備理事会(FRB)が近年、物価目標の達成に苦心している主因である、というものだ。提唱者は、就労を望む者全員に政府は雇用を保証すべきだと主張する。景気サイクルの良し悪しに応じ、民間部門の就労人数に対する政府保証職に頼る人数の割合は伸縮し、景気拡張期には民間部門が人材獲得のため賃金を引き上げる必要が生じるため、人々は高賃金につられて民間の職を求める。

FRBに残される役割は

MMT理論では、FRBはおおむね無駄な存在だと見なされている。MMTの枠組みでは、議会が参照金利(ゼロの場合もあり得る)を決め、FRBがそれを運用する。しかし全国民に雇用が保証されるため、完全雇用を達成するというFRBの責務は形骸化する上、物価も財政的な手段によって制御されることになる。FRBには金融監督の役割が残るほか、危機時の「最後の貸し手」機能も維持される。

裏目に出ないか

MMT理論では、選挙で選ばれた要職者および政府の規制機関に大きな信頼が置かれ、これらが正しく振る舞い、予算運営で卓見に富み、物価も非常に正確に制御できるとされている。批判派は、金融市場と世界的な資金フローが反乱を起こす可能性が見過ごされている、と指摘する。

MMTの枠組みでは、為替は変動相場制となる。米国財政への信頼が失われればドルが下落し、輸入物価の上昇を通じてインフレが起こったり、さらに悪いことに金融危機につながる恐れがある。

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