アスクル代表取締役社長兼CEO 岩田彰一郎
消費者向けネット通販に本格進出、アマゾンとは違う切り口で対抗する!
ネットで勝てる術を学ばないと生き残れない
──消費者向けネット通販では、「Amazon.co.jp(アマゾン)」の存在感が増しています。
岩田 アスクルは、オフィス用品から始まりました。そのオフィス用品は間接材市場の中でまだほんの一部だということがわかってきました。
間接材は、物販15兆円、サービス17兆円の30兆円強の市場です。オフィス用品は1兆円強ですから、ごくわずかしか占めていません。われわれが強みをもつ市場ですが、アマゾンがここも取り込んでしまうのではないかという危機感もあります。今われわれが持っているインフラを生かせば、日本の135兆円の消費市場においても、ネット通販でチャンスがあるだろうということで乗り出したのです。
ネット通販で、15兆円の間接財市場チャンピオンになっていても、135兆円の消費市場のチャンピオンには負ける。強迫観念かもしれませんが、タイミングは今だと感じたのです。物流インフラを持つわれわれは、B2Bよりも135兆円の小売市場を対象にしていったほうが効率的なのではないかと考えています。
仮想ライバルはアマゾンというモンスターですから、負けるのではないかという怖さもあります。ただ、ここが世界の流通を握ってしまうということでいいのか。そうなると、つまらないですよね。そもそも流通業では、1つの業態ですべての需要を満たすことはできません。だから、違う切り口で対抗できるようなインフラをつくっていきたいという思いもあります。
──アマゾンに対するロハコの強みは何ですか。
岩田 ロハコは働くお母さんにとって、使いやすかったり、親しみやすかったりというように、お客さまとの距離を近していこうと考えています。かたちだけアマゾンを追いかけても、敵うわけがありません。お客さまに近い、お客さまと一緒に考えるサービスにしていきたいと思っています。
それと、B2B事業を持っていることが、われわれの強みです。ロハコを立ち上げるに際して、そのプラットフォームを使うことができます。たとえば、B2Bでは注文が平日の午前中に集中しますが、B2Cになると、夜間あるいは土日の注文が多くなりますので、われわれの持っている資産をフル活用できるのです。
──アスクルは中国の上海に拠点がありますが、アジア市場についてはどのように考えていますか。
岩田 次の次に来る競争といいますか……。アジアの巨大な市場をどう取り込んでいくかというと、やはり規模と調達力が非常に重要だと思います。アマゾンに市場を取られてしまわないように、規模を拡大しておかないと、太刀打ちもできなくなってしまうでしょう。
そういう意味で、日本を含めたアジアの流通において、世界の覇者であるアマゾンが勝つのか、あるいはアジアですでに巨大な規模をもつメーカーが勝つのか、そこはわかりませんが、いずれにしても巨大な市場で調達力をつけておかないと、その次の戦いに勝てるかどうかわかりません。アジアは非常に重要な市場であるという認識はしています。
──長期的には、アジアが主戦場になるということですね。
岩田 どう勝ち残っていくか、あるいは生き残っていくかということです。今、世の中が激変しています。われわれの主力はカタログ通販ですが、ネットが拡大していく時代に、ここで勝てる術を学ばないと生き残っていけません。一定量以上の物流の規模ももたなければいけないし、効率的な物流の仕組みも必要になります。アジア、ひいては世界の需要を取り込むためにも、その次も見据えておく必要があるのです。