ジーユー代表取締役社長 柚木 治
年商1兆円をめざし、ユニクロの2倍のスピードで成長する!
ファーストリテイリング(山口県/柳井正会長兼社長)が2006年に立ち上げた「g.u.(ジーユー)」ブランドが快走を続けている。ジーユー(東京都/柚木治社長)の12年8月期は、売上高約580億円、営業利益約50億円で増収増益となった。試行錯誤を経て、ようやく本格的な成長軌道に乗り始めたジーユーは第2のユニクロ(山口県/柳井正会長兼社長)をめざす。その経営戦略について、柚木社長に聞いた。
聞き手=千田直哉 構成=下田健司(ともにチェーンストアエイジ)
ユニクロの半値のファストファッション
──ファーストリテイリングの中で、ジーユーはどういうポジショニングにあるのですか。
柚木 大きく言うと、2つの軸があります。1つは、驚きの低価格。もう1つは、ユニクロがベーシック主体の商品であるのに対して、トレンドファッションを取り入れていることです。
──ユニクロのセカンダリーラインという位置づけですか。
柚木 そうとも言えますし、そうでないとも言えます。もともとはユニクロの廉価版でスタートしました。しかし、お客さまのニーズに応えていない、需要を創造していないということから、軌道修正を重ねてきました。2006年のブランド立ち上げから6年ですが、ビジネスモデルとしては今、5世代目に入っています。
──どのように変わってきたのですか。
柚木 スタート時は、ODM(相手先ブランドによる設計・生産)中心の低価格ファッションでしたが、うまくいきませんでした。2世代目はユニクロの廉価版で、価格はユニクロの7掛でしたが、これもお客さまには響きませんでした。3世代目は、ユニクロの半値かそれ以下に設定しました。典型的なのが990円ジーンズですね。ヒットしましたが、行き詰まったため、4世代目としてトレンドファッションを取り入れたのです。ユニクロの廉価版で、「多品種少量」と「売り切れ御免」をミックスしました。
今は5世代目に入っていて、多品種少量ではなくて品番を絞り込んだうえで、トレンドファッションを取り込んでいます。ファッション業界では常識外れのやり方ですが、販売は好調です。
──セグメンテーションやターゲティングは考えているのですか。
柚木 お客さまを限定する意味でのターゲティングは考えていません。ただ、矛盾するようですが、20代の若者に支持されるブランドをめざしています。今は20代に支持される服が、年齢に関係なく着てもらえる時代なのです。
──ファストファッションの「フォーエバー21」に近いですね。
柚木 考え方は似ているかもしれません。若者に支持されるブランドをめざしつつ、結果的には幅広い年齢層のお客さまに買っていただいている。
大ヒットした990円ジーンズが一周し、ビジネスが失速したあと、軌道修正してトレンドファッションを取り入れたわけですが、それが11年春の「be a girl」(ビー・ア・ガール)というスモールコレクションです。多品種少量・売り切れ御免の典型的なファストファッションです。
やってみてわかったことが2つありました。多品種少量でも、トレンドのど真ん中をとらえれば、ものすごく売れるということです。もう1つは、若者向けにつくったのですが、主婦層をはじめ年齢に関係なく買ってもらったということです。
それで、全体をビー・ア・ガールにしようと考えました。それも多品種少量・売り切れ御免ではなくて、トレンドのど真ん中を見定めて、品番を増やさずに1点当たりの生産量を多くしました。