RSR(Retail Systems Research)マネージング・パートナー ブライアン・キルコース
「参画の時代」が小売業のビジネスモデルを変える!
──米国で新しいビジネスモデルを具体的に創造している小売業はありますか?
ブライアン 百貨店のノードストロムです。従業員はサプライチェーン内のどの段階でも、商品在庫を調べることができるのです。つまり、店頭に在庫がなければその場で調べて、在庫のありかを突き止めお客の家に配送する手配ができる。現在こうした取り組みを実践しているのは従業員ですが、今後は同じような手段を消費者にも提供できるようになるでしょう。
また、米国にはQRコードを実験的に導入している食品スーパーマーケットもあります。商品の棚にQRコードがあり、それをスキャンするとお客はその商品を使ったレシピや組み合わせのいい食品やその他のアイデアを入手できるというものです。
今現在、注目されているのは、お客が来店したことを、その時点で小売業者に知らせるシステムです。これが実現できれば、来店したお客に特別な「情報」を提供できるようになるでしょう。これには多くの障害があり、実現は難しいかもしれません。しかしこれまで、セルフサービスのお店で小売業者がお客と触れ合う機会は、精算する時だけでした。しかし今度は買物中にお店と接点を持つことができるようになるのです。
いずれにしても、現在の「情報」は、お客ではなく従業員の方を向いています。今後はもっとお客に向けて「情報」発信すべきだし、スマートデバイスを活用すればそれは案外簡単にできることだと思います。実際、米百貨店メイシーズのテリー・J・ランドレンCEO(最高経営責任者)はそれが最も重要な課題であると宣言しているし、大胆な改革に乗り出しているのです。
小売業にはイノベーションが必要
──新しい取り組みを具体化するに当たって「情報」以外に重要なことは何でしょうか?
ブライアン ひとつには、お客の「来店体験」をデザインすることです。たとえば、低価格で食品を提供するお店であれば、価格と利便性が大事なので、なるべくお客が商品を選びやすく滞在時間が短くて済む方法を考えるべきでしょう。逆に高級な商品を販売するのであれば、いかに店頭に長く滞在してもらうかと考えるべきです。