市場外流通とは? 中間マージンが抑えられる? 徹底解説します!
市場外流通とは
市場外流通とは、卸売市場を通さずに生産者と小売業者・消費者が生鮮食品等を直接流通させることをいう。ここ30年で市場外流通は増加傾向にあり、たとえば青果物の市場外流通率は1990年の2割足らずだったのが、直近では4割に達したとされる。水産物では半分が市場外流通だ。
市場外流通の形態は、生産者(農業・漁業法人や農協・漁協など)と大手流通チャネルによる直接契約、流通センターなど大手卸による仲卸の系列化などが一般的だ。ネット販売の普及により、消費者が生産者と直接取引する「産地直送」も定着してきた。
市場外流通取引の中間マージン
市場外流通取引は、流通過程において卸・仲卸が介在しないので「中間マージン」を抑えられるのが特徴だ。生産者の取り分は青果の場合、一般的に販売価格の3割前後とされるが、市場外流通なら6割を超えるケースもある。
市場流通する生鮮品は、産地が特定されるものの他の生産者と一緒にされてしまう。消費者にとっては、作り手の努力や工夫が見えないし、生産者も消費者にアピールできない。市場外流通なら、生産者と消費者がダイレクトにつながることもできる。
市場外流通のデメリット
市場外流通のデメリットは、卸売市場の衰退に伴うさまざまな副作用にある。市場外流通の拡大と加工食品の輸入増加に伴い、青果・水産卸市場の取扱金額は縮小傾向にあり、昭和50年代の9兆円超から現在3分の2程度の水準にまで落ち込んでいる。
結果として、中央・地方の卸売市場機能は急速に低下し、卸売市場は中央・地方とも閉場が相次ぎ、卸・仲卸業者数も廃業や経営統合を迫られている。大消費地である東京も例外ではなく、東京荏原青果と全農大田青果市場の経営統合は記憶に新しい。
市場は、ただ単に生鮮食品を右から左に流しているわけではない。加工食品と違って、生鮮物はその特性を捉えたうえでの集荷・配荷を行い、産地から小売業者・消費者に送り届けなければならない。だからこそ生鮮物に精通し、かつ、物流インフラを擁する卸・仲卸の存在が欠かせないのだ。
日本の流通市場は他国に比べて発達しており、比較的鮮度の高い豊富な生鮮物を手ごろな価格で入手できるとされている。今、その市場機能が失われようとしているのだ
市場流通機能が衰退すると、品揃え、鮮度、供給量や小売業者の仕入れにも支障をきたす。生産者と直接契約できる体力のある総合スーパーなら影響を回避できるだろうが、個人経営の八百屋・魚屋や地方の食品スーパーだと対応が難しい。
市場外流通の実例
市場外流通の実例として、イオングループの取り組みについて紹介する。流通マージンの圧縮や商品差別化をねらいとして、大手チェーン各社は市場外流通に注力しており、それはイオンも例外ではない。同グループで中核機能を担うのが、イオンフードサプライだ。
イオンフードサプライは青果や水産物さらには食肉まで取り扱う。その上で、産地からの一括仕入れ、加工、グループ全店舗への配送まで集中コントロールし、リードタイム短縮、流通コストの極小化、食品ロス削減、品質保証さらには衛生管理までを実現している。イオンの事例が示すように、市場外流通促進にむけては、機能のワンストップ化が進むのかもしれない。