第126回 SC運営の成否を決める顧客の滞在時間 “装置産業”としての役割とは何か
「平均滞在時間は何時間ですか」。この質問に答えられるショッピングセンター(SC)運営担当者は少ない。そもそも滞在時間を計測していないSCもあることに驚く。あくまでSCは“装置産業”であり、施設運営業だからこそ、顧客の滞在時間が重要であることを今号では解説していく。

滞在時間は顧客満足度のバロメーター
SCでは、滞在時間と客単価は正の相関を示す(図表1)。長い時間居れば、お腹も空き、「ご飯食べて行こうか」となる。これが目的の店舗だけで帰ってしまえば滞在時間どころではない。とにかく、SCの運営担当は滞在時間の変化に目を光らせたい。

売上の減少するSCでは、滞在時間が縮んでいるケースが多い。その理由はたった一つ、「つまらない」からである。たとえば、千葉にある某大型テーマパークへ遊びに行くと、相当な金額を払っても朝から晩まで滞在する。帰りには頭に耳を付けて電車に乗り込む人もいる。はたから見ると少々滑稽ではあるが、当の本人は至ってまじめで、“魔法にかけられている”から恥ずかしいことなどない。楽しければ一日いるし、つまらなければ用が済めばさっさと帰る。これをSCに置き換えればわかりやすいだろう。一昨年より去年、去年より今年、来店者の平均時間が縮んでいればそのSCの楽しさは減退している証左である。
顧客価値のそのものである客単価
そして、客単価は顧客価値の表れである。購買は選挙投票に似ている。支持する候補者に投票するようにロイヤルティを持つブランドや商品に顧客は金を払う。その動機は、商品の機能性、利便性、デザイン性、ブランド力など、それぞれ異なり、価値を感じるのは顧客の自由である。要するに顧客価値のない商品やサービスに消費者は金を払わない。至極当然のことである。
10分で帰る客と2時間いる客、どう考えても2時間滞在する客の方が金を使うことは明白だろう。とすると、SCの滞在時間はSCの魅力を計測する最も客観的な数字である。にも関わらず、顧客の平均滞在時間を把握しないのは、顧客の支持を把握していないことと同義である。店舗巡回、ミステリーショッパー、接客ロープレもいいが、SC運営担当者はまず、この数字を把握することである。それも経年かつ継続的に計測することでその変化を見ることができる。
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