あの「東スポ」が餃子を売り込み、食事業を次の柱に据える理由とは?

構成:西岡 克(フリーランスライター)
取材:阿波 岳 (ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者)

東京スポーツ新聞社(東京都/平鍋幸治社長)は、「東スポ」ブランドを冠した冷凍餃子や唐揚げなどの食品を企画・監修し、業務用を中心に販路を拡大してきた。近年は飲食店での提供や居酒屋のプロデュースにも乗り出し、「食」事業としての広がりを見せている。将来的には本業の新聞、WEBに続く3の柱として育てたい考えだ。同社の食品事業の現状と今後の展望を聞いた。

「東スポ居酒屋・青ノ山」(東京都台東区)では、「東スポ餃子」や唐揚げなどを提供する

部数減を背景に生まれた「東スポの餃子」

 新聞業界は、1997年をピークに発行部数が大きく減少している。日本新聞協会(東京都)の調べによると、24年の新聞発行部数は対97年比でおよそ半分にまで落ち込んだ。中でもスポーツ紙の減少は著しく、東京スポーツ新聞社も業績悪化を背景に、213月に希望退職者を募る事態となった。こうした状況を受け、同社では新たな収益源の確保が急務となっていた。

東京スポーツ新聞社の本社が入居するビル(東京・江東区)

 そうした中で着手したのが、食品のプロデュース事業である。その第1弾として219月に発売したのが、紙名を冠した冷凍食品「東スポ餃子」だ。

 きっかけは、当時取締役編集局長だった平鍋幸治氏(現社長)が217月、旧知の食品商社である戸田商事(東京都)の鈴木英弘副社長と会食した折に、同社が買収した業務用食肉卸・大和フーズ(栃木県)をどう活用すべきか相談されたのが発端だった。話の流れで「東スポの餃子をつくろう」というアイデアが生まれ、企画がそこから一気に進んだという。

 この構想を思い描いた際に平鍋氏の頭に浮かんだのは、夕刊紙「東スポ」を広げて競馬欄を眺めながら、餃子をつまみにビールを飲むサラリーマンの姿だった。それがそのまま、“東スポブランドの食”のコンセプトとなった。

 「東スポ餃子」は、“スポーツ紙×餃子”という意外な組み合わせが話題を呼び、発売直後から注目を集めた。一般消費者からは「青森県産ニンニクの甘みとまろやかさで、量の割に食べやすい」、飲食店からは「皮がもちもちしていて厚すぎず、鍋や揚げ餃子にも使いやすい」といった声が寄せられているという。

餃子一袋に50個ぎっしりと詰まっている。社内の壁には餃子の宣伝ポスターも

 商品開発にあたっては社内で試食を重ね、とくにニンニクの量について検討を重ねた。当初は4倍、5倍と試したが、甘みが強くなりすぎパンチに欠けたため、最終的に通常の3というバランスに落ち着いた。

 当初は、冷凍餃子市場で味の素(東京都)や大阪王将(大阪府)と肩を並べる存在をめざしたが、価格競争では大手に太刀打ちできないと判断。そこで、青森県産のニンニクを通常の3倍使った「マシマシ」仕様で差別化を図り、50個入り税込2484円(公式オンラインショップの価格。現在は同2700円)というやや高めの価格帯で販売する方針へ早期に転換した。

 

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取材

阿波 岳 / ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者

大学卒業後、社会の荒波にもまれる日々を経験。そこで書籍や会報誌の編集に携わるうちに、メディア事業への興味が芽生え、今に至る。
趣味は喫茶店巡りと散歩。喫茶店での一杯のコーヒーや、街角の散策を生きがいとしている。
これまで全都道府県を制覇するという小さな目標を達成した。何かを極めたり、制覇したりすることには、なぜか人一倍の熱意を注いでいる。
最近の悩みは、ここ数年で増えた体重との戦い。健康の大切さを意識しつつも、喫茶店のコーヒーに合わせたスイーツや、ランチの大盛りがやめられない。今日もまた元気に「大盛で!」と注文しつつ、明日こそ控えめにしようと心に誓っている。

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